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サステナビリティと企業価値向上

近年、「サステナビリティ」は企業にとっては、ますます重要なテーマになっています。地球温暖化などの課題に取り組むためには、社会・産業・バリューチェーンの再構築が求められ、企業もその流れに対応する必要があります。そこで今回ご紹介する『サステナビリティとコーポレートファイナンス』は、こうしたサステナビリティ経済における金融の役割を論じています。

本書は3つの主要なセクションに分かれ、第1部では、サステナビリティと資本市場のかかわりを整理し、第2部では実際の企業のケーススタディを通じてサステナビリティ経営の実践例を紹介します。第3部では、産官学の視点からサステナビリティと金融・資本市場の未来について討議された内容が収録されています。特に私の興味を引いたのは、日立製作所の津田氏とオムロンの井垣氏による対談です。

グループ経営戦略や資本政策の策定にESGやサステナビリティの要素を取り入れる際に重視していることは何かという問いに対して、津田氏は、まずガバナンスから取り組むことの重要性を強調し、日立が過去に経験した構造改革の際、透明性と実効性のある意思決定体制がいかに不可欠であったかを語っています。ガバナンスを整備することで、ESGの中でも特にガバナンスが企業戦略における基盤としての役割を果たすと述べ、多様性を担保する組織体制も欠かせないとしています。

一方、井垣氏は企業価値の向上という観点から、サステナビリティ課題がどのように企業価値に貢献するかを逆算して考えるべきと提案しています。まず企業価値の創出につながるエクイティストーリーを描き、その中でサステナビリティがどう役割を果たすかを考えることで、持続的な成長へと導くと述べています。

長期視点での経営のサステナビリティと相対的に短期的なROIC-WACC経営のバランスの取り方、どのような考え方に折り合いをつけているかという興味深い質問に、井垣氏は、短期の成果が積み重なって将来につながるものであり、短期と長期はつながっている。短期と長期の取り組みは利益相反するものではないことをステークホルダーに説明していく努力が必要だと説明しています。

津田氏も井垣氏の意見に賛同し、環境や人的投資が短期的には利益を生まないかもしれないが、長期的にはコストダウンや生産性向上につながると述べました。これを単なるトレードオフではなく、トレードオンとして捉えることで、企業の価値創造に貢献すると語っています。

私たち、コーポレートファイナンスに携わる実務家、あるいはそれを目指す方にとって、この『サステナビリティとコーポレートファイナンス』は読むべき本だと思います。

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