CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務

定期収益をベースとするビジネスモデルは今に始まったものではありません。新聞購読や電気、ガス、水道などの業界では以前から当たり前のものでした。定期的に顧客にモノやサービスを提供し、その対価として購読料や利用料を受け取ることで安定的な収益を獲得することができました。

では、近年注目されるようになったサブスクリプションとは何が違うのでしょうか。それは情報技術の発達で全てのものがインターネットでつながる世界になったことがあります。今日のサブスクリプション・サービスの多くは、「データ」で届けられ、その過程で膨大な量のデータを収集することができるようになったのです。

Amazonは、サブスクリプション・ビジネスではありませんが、Amazonでは、注文履歴で私が初めて購入したものを簡単に検索することができます。私は2005年12月2日に「行動ファイナンス―金融市場と投資家心理のパズル」という本を初めて購入していました。Amazonは氏名、住所に加えてクレジット情報、利用状況、実際に閲覧した商品情報など膨大なデータを取得しています。私の興味、嗜好が手にとるようにわかります。その上で、私に商品をレコメンドしてきますから最強の店員とも言えます。一方、私は昔からセブンイレブンで買い物をしていますが、セブンイレブンは私という顧客をどこまで理解しているでしょうか。顧客についての理解が今後のビジネスの勝敗を分けることは間違いありません。サブスクリプション・ビジネスでは、マインドセットを従来の製品・サービス中心から顧客中心に変える必要があります。

サブスクリプション・ビジネスの収益構造はどうでしょうか。従来の事業計画では、収益(売上高)は単価×数量で計算していました。サブスクリプション・ビジネスでは、「単価×数量×時間」で求めることになります。これについては、ファイナンスを理解する私たちにとっては異論のないところです。「長期にわたる将来キャッシュフローの最大化」こそがサブスクリプション・ビジネスの目的の一つになるからです。また、次世代CFOは従来の損益計算書の限界を理解する必要があるでしょう。この本の中でもズオラ(Zuora)社CEOのティエン氏のコメントが紹介されています。

「第1に、伝統的な損益計算書は、継続的に出たり入ったりする金額(筆者注:収益)と、そうではない1回ごとに出入りする金額を区別していない。それは、いまここにある1ドルと、今後10年にわたって毎年入り続ける1ドルのあいだに違いはない、と言っているのに等しい。定期収益はサブスクリプション・ビジネスの土台だが、従来の会計はこの事実を考慮に入れて設計されてはいない。
第2に、営業およびマーケティング費は、過去の販売に際しての支出額に等しい。それは本質的に埋没コスト(サンクコスト)である。サブスクリプション・ビジネスにおける営業およびマーケティング費は、将来のビジネスを推進するために行使される、将来に向けた戦略的な支出と考える必要がある。
そして最後に、これまでの損益計算書は過去を映し出す写真である。すでに獲得したお金、すでに支払った経費、すでに取った行動を記述しているものだ。サブスクリプション・ビジネスの損益計算書は、将来に何が見えるかを記述するものだ。」

次世代CFOを目指す方は、must-buy だと思います。

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