戦略自由度の価値を算定する

従来のNPV法では、とらえきれない何かがあることがわかっています。

たとえば、製薬業界では、NPVが明らかにマイナスになるような研究開発案件でも取り上げることが多いと言われています。NPVがマイナスでも、研究開発を価値あるものと考えていることになります。

他にも、更地や遊休地を開発すれば明らかにNPVがプラスになると考えられるのにもかかわらず、不動産デベロッパーがそのままにしていることがあります。不動産デベロッパーは、不動産市況が今後どうなるかを見極めてから、行動にうつすことの価値を経験的にわかっていると言えます。

これらのケースにおいては、NPV法による投資判断ではとらえられない何かがあることがわかります。私たちがNPVを算定する場合、投資のタイミングもプロジェクトの期間も固定して考えます。投資を遅らせる、あるいは状況によっては、中止するといったことも考慮していません。つまり、「今やるか、やらないか(Now or Never)」の判断をしているということです。

NPV法には、大きく二つの弱点があります。一つは、先述したように、NPV法は、「今やるか、やらないか(Now or Never)」といった意思決定になるということです。

「もう少し様子をみてから」という選択肢は考えられません。言い換えれば、NPV法とは、今投資をした場合の価値と全く投資をしなかった場合の価値とを比較していることに他なりません。

二つ目の弱点は、NPV法は、環境の変化に応じて戦略を変えていくなどの柔軟性をとらえることは出来ないということです。NPV法は、評価の時点で企業が持っている情報に基づいて投資判断が行われます。

NPV法は投資を「賭け」のように考えているとも言えます。つまり、NPVがプラスならば、掛け率はいいだろうと考え、チップをテーブルに置き、サイコロを振る。あとは、天にお任せということです。

実際は、事業が進むにつれて、その事業への理解が進んだり、事業環境が変化することによって、戦略そのものを変化させていくこともあるでしょう。これによって当初のプロジェクトとは全く異なるものになる可能性もあるわけです。つまり、天にお任せして何もしないということはあり得ないわけです。NPV法はそのような戦略自由度の価値をとらえることができません。

この戦略自由度を評価する方法は、オプション・プライシング・モデルに基づいたリアル・オプション法とディシジョン・ツリー分析法があります。

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今までは、過去の実績データを線形になぞれば将来予測することが出来たかも知れません。今、私たちは、これからの非線形な時代にどう対応していくかが問われているのです。そんな今だからこそ、最先端の意思決定の考え方、ツールを身につける必要があります。ご参加を心よりお待ちしております。

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