2021年はさまざまな会計ルールの変更が適用されます。2021年3月期からは、のれんや固定資産の減損などの前提の根拠を有価証券報告書に記載することが求められます。他にも、企業業績への影響が大きいのが「収益認識に関する会計基準」です。これまで、日本の会計基準では、売上をどのタイミングで計上するか包括的に定めたルールはありませんでした。2021年4月に始まる決算期から売上高の計上タイミングが明確化されます。
今後はどうなるのでしょうか。製品であれば、その所有権が移転したタイミングが売上計上となります。製品を出荷するタイミングで売上を計上していた企業は、お客様が受け取った時点に売上計上するよう変更が必要です。製品とサービスのセット販売の場合はややこしくなります。お客様が便益を得るタイミングで売上を計上する必要があるからです。
例えば、パソコンに3年保証をつけて200,000円で販売する場合、従来は200,000円全額を販売時に売上高として計上できました。ところが、3年間の保証サービスが30,000円の場合、1年目に計上できる売上は本体価格170,000円に1年間の保証サービス10,000円を加えた180,000円になります。結果として、現金収入は変わらないものの、1年目の売上高は減少することになるのです。
運輸業にも影響します。海運会社は従来、荷主から受け取った荷物を目的地に届けた時点で売上として計上していました。言ってみれば「航海完了主義」が主流だったのです。ところが、今後は航海の進捗に応じて売上を計上することになるようです(所有権が移転したタイミングが売上計上が基本ならば、従来通りの航海完了主義でもいいような気もします)。
日経新聞によれば、あずさ監査法人はGPSで得られるデータを使った監査を始めます。監査先の海運会社の船舶がどう運航しているかリアルタイムに把握し、関連する資産や収益が企業の決算書に適切に計上されるようにするのが目的のようです。上場企業が増える一方、監査を担当する会計士が不足しています。度重なる会計基準の変更に対応し、監査の精度を高めるために、テクノロジーの力を使う機会が今後増えるでしょう。会計士の世界もDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れとは無縁ではいられないようです。