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Boeingにみる米国型資本主義の行く末

世界最大の航空機メーカーであるボーイングは米国政府などに総額600億ドルの支援を求めているといいます。ボーイングは主力の小型旅客機「737MAX」が相次いで墜落事故を起こし、運航停止に追い込まれました。さらにここに来て新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあり、米国政府に泣きついたというわけです。

ボーイングの2019年12月期の売上高は766憶ドル(約8兆2,728億円)と前期比24%の減少となっています。さらに営業利益は赤字です。償却前営業利益(EBITDA)はなんとか黒字を維持しています。ただ、それも7憶3,400万ドル(約793億円)と前期比95%もの大幅な減少となっています。売上高EBITDA率はなんと1%です。さらに2019年12月期に86憶ドル(約9,288億円)もの債務超過に転落しました。

出所:オントラック作成

ボーイングのキャッシュフローをみてみましょう。ボーイングの資金繰りの厳しさがうかがえます。フリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)だけでなく、営業CFも24憶4,600万ドル(約2,641憶円)のマイナスになっているのです。驚くのは、このような状況にもかかわらず、2019年12期にボーイングは、70億ドル(約7,560億円)の自社株買いと28億ドル(約3,024億円)の配当を行っているのです。これは明らかに行き過ぎた株主還元です。

出所:オントラック作成

ボーイングは、なぜ、債務超過に転落するまで株主還元を進めたのでしょうか。それは、株価上昇に連動して経営陣の報酬が上がる仕組みを取り入れていることも一因でしょう。健全な財務体質を犠牲にしてまで株主還元を推し進め、経営危機に陥ったら、政府に泣きつく。こんなことは本来であれば、許されるはずもありません。ボーイングの苦境は行き過ぎた株主重視の経営のあり方、ひいては米国型資本主義の終焉を予感させます。

※参考ブログ「債務超過の驚くべき原因

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