日経新聞(2019/6/7付)が時価総額5兆円以上の世界の上場企業を総資産利益率(ROA)で順位付けしました。米国企業が上位20社中12社を占めており、あらためて米国企業の経営効率の高さを見せつけられます。
ここでROAを復習してみましょう。ROA(=Return on Asset)は当期純利益を総資産で割って算出します。言ってみれば、資産をどれだけ効率的に利益に結びつけることが出来たかを表す指標です。また、ROAは、以下のように売上高当期純利益率と総資産回転率の掛け算で表現できます。
ROAランキング1位はデンマークの製薬会社であるノボノルディスクです。糖尿病の治療薬で有名なこの企業のROAは36.5%と世界の上場企業の平均(6.3%)を大きく上回ります。この企業の強みは何といっても売上高純利益率34.5%という圧倒的な収益力の高さでしょう。
出所:日本経済新聞
一方で、企業の資産をどれだけ効率的に売上高に結びつけているかを表す総資産回転率の高さを強みとするのが、3位のヒンドゥスタン・ユニリーバ(印)です。日用品でP&Gに次ぐ世界第二位のユニリーバ(英・蘭)のグループ企業です。回転率は2.1回です。BOPビジネスの成功例として取り上げられることの多い同社です。年間所得が約30万円以下の貧困層に小分けした洗剤やシャンプーを販売しています。そんな同社の効率性の高さの秘密は興味があるところです。
実はランキング100位以内に日本企業は4社しか入っていません。米国企業の平均ROA6%に対して、日本企業は平均ROA3%弱と大きな開きがあります。内閣府が発表した日本国の成長戦略「未来投資戦略2017」でうたわれた「大企業(TOPIX500)の ROA について、2025 年までに欧米企業に遜色のない水準を目指す。」という目標達成には、まだまだ道のりは遠いと言わざるを得ません。
「未来投資戦略2017」でも言及されていましたが、日本企業のROAの低さの原因は総資産回転率の低さよりも、売上高当期純利益率の低さ、すなわち収益性にあります。この背景には事業再編が遅れ、低収益の事業を抱え込み続けている日本企業の姿があります。
日立製作所の副社長として日立V字回復をけん引した現会長の中西宏明氏はこう言います。「事業をやっている当事者が自分の事業がもうダメだ、という決断ができないんです。しないんです。それは部下から上がってくる話ではないんですね。これこそが経営者の役割です」
まさに今の日本企業に求められているのは決断できるリーダーなのです。
※参考ブログ「未来投資戦略2017、企業の稼ぐ力に「ROA」」