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HOYAの強み

半導体製造装置のニューフレアテクノロジーを巡るHOYAと東芝の「買収合戦」は、東芝の勝利で終わりました。東芝の発表後に、東芝より高い価格を提示したHOYAは一時は「敵対的買収か」と世間を驚かせました。ところがHOYAはその後、価格を吊り上げることなく、あっさりと身をひいたのです。

HOYAが価格引き上げで対抗しなかったのは、当初示した1万2900円が「(求める)リターンを出せる金額」(鈴木CEO)として約4年もかけて計算し尽くされた額だったからといいます。そして、その基準となったのが、同社が20年以上前から重視する「SVA(Shareholder’s Value Added=株主付加価値)」です。ほぼ、EVAと同じ概念です。SVAがプラスならば、株主価値が増加したことを意味します。

HOYAは光学技術などのコア技術の用途開発力や独自性のある製品群を持つことで知られています。ところがHOYAの鈴木CEOは「本質的な強み」はそこにはないといいます。

私は、昔から複数の事業を手掛け、そこから強い事業だけを残す経営手法にこそ、「本質的な強み」があると認識しています。すなわち、長い時間をかけて新陳代謝を繰り返し進化させ、収益性と成長性を兼ね備えた現在の事業が完成したのです。このやり方は今後も継承します。常に、長期に事業ポートフォリオを俯瞰し、新しい事業を追加し、その時代に合った強い事業だけを残していく。その結果、事業の中身は入れ替わりながらも、持続的な成長を実現できると考えています。」出典:同社アニュアルレポート2019から一部抜粋

実際にHOYAの事業ポートフォリオは次のように入れ替わってきました。

出典:同社アニュアルレポート2019よりオントラック作成

HOYAでは、四半期ごとに各事業のレビューと改善活動を行っています。その際に基準となるのが各事業のSVAです。これにより、各事業への経営資源の配分、縮小・撤退などの判断を行います。これがHOYAの事業ポートフォリオ経営を支える仕組みになっています。同社広岡CFOはこう言います。「環境が構造的に厳しい場合、手を打っても企業価値向上に寄与しないので撤退する

さらにHOYAの取締役会は注目に値します。HOYAは、日本でコーポレートガバナンスがほとんど取りざたされていなかった1995年に社外取締役1名を選任し、2003年には、取締役の半数以上を社外取締役にすることを定款で定めています。現在は、取締役6名のうち5名が社外取締役です。そして、弁護士や公認会計士、学者を社外取締役として迎え入れる企業が多い中、HOYAは、全員が企業経営の豊富な経験者という布陣となっているのです。

先述した鈴木CEOはこうした取締役会について「常に緊張感を持って経営に当たることになる」と述べています。資本コストを意識した株主重視の経営とこうしたマネジメントシステムがHOYAの経営の根幹を支えていると言えます。その結果として、過去最高の時価総額の水準達成につながっていると言えるでしょう。

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