ピケティ、ケインズを訳した評論家、翻訳家の山形浩生氏が経済を俯瞰し、何が重要なのかを知るために今読むべき本を12冊あげています。経済は大きな仕組みです。どんな理論や思想もその一部分しか捉えることはできません。山形氏はまず経済全体の仕組みの中で、何が重要なのか、それをめぐる「思想」がいかにあやふやなのかを理解することが大事だと言っています。今回、その「今知るべき 経済思想」12冊をご紹介したいと思います。
1. わからないことだらけの経済理論
「クルーグマン教授の経済入門」ポール クルーグマン (著)
経済政策にも影響を与えるノーベル経済学賞受賞の著名学者が、財政赤字や貿易戦略、通貨戦略などをわかりやすく解説。
2. 基礎教養、しかも広範でなかなか楽しい
「国富論」アダム・スミス (著)
古典中の古典、「神の見えざる手」「レッセフェール」という言葉を生み出し国家が真に豊かになることを探求した。
3. シュムペーター屋に対抗せよ!
「テクノロジーとイノベーション」W・ブライアン・アーサー (著)
イノベーションはもともとどこから生まれ、どう展開していったか。その構造とは。テクノロジーの性質を理論化する。
4. 資本主義の起源、みたいな話
「(新約)大転換」カール・ポラニー (著)
市場は社会に何を与えたのか。市場が同時に持つユートピア性と破壊性を文明史的に解き明かした名著。
5. 資本主義とは?制度から人類世界へ
「ダグラス・ノース制度原論」ダグラス・C・ノース (著)
経済変化の本質は何か。制度はどう進化するのか。成長と衰退を分けるものは。制度的視点からみた現代の世界経済秩序。
6. 資本主義とは?社会主義の裏面として
「資本主義の本質について」コルナイ・ヤーノシュ (著)
資本主義の本質をイノベーションと余剰経済とし、社会主義経済と比較して資本主義システムの相対的な優位性を説く。
7. ものを作る営みの一部としての経済
「システムの科学 第3版」ハーバート・A. サイモン (著)
「いかにあるか」ではなく「いかにあるべきか」に関わるデザインの諸科学の本質を追究し、その可能性を説く。
8. ゲーム理論が持つ面白さと魅力
「はじめてのゲーム理論」川越 敏司(著)
経済学の分析道具として発展したゲーム理論。ナッシュ均衡などゲーム理論の基礎と応用をやさしく解説。
9. 情報時代の経済学とは
「情報経済の鉄則」カール・シャピロ(著), ハル・ヴァリアン(著)
Googleを巨大企業に押し上げた経済学者である同社チーフエコノミストらが、ネットワーク型経済を読み解く。
10. 人類進化の中の経済学
「協力する種」サミュエル・ボウルズ(著),ハーバート・ギンタス(著)
ゲーム理論や実験経済学、人類学、進化心理学などの知見を駆使し、人類の「協力の進化」を壮大なスケールで描く。
11. お金の意味
「21世紀の貨幣論」フェリックス マーティン(著)
マネーとは何か。なぜ人はマネーに翻弄されるのか。マネーをめぐる6000年の歴史を振り返り資本主義の未来を問う。
そして、最後はなんと拙著「道具としてのファイナンス」です。まさに経済に底流する思想を掴むための重厚な書籍が並ぶ中、なんとも場違いな感じです。経済思想をより理解するためにも、基礎的なファイナンス知識が必要だということでしょう。今回のご紹介した書籍の何冊かは私もすでに購入しています。ほとんどが読まずに本棚に飾ってあります。ゴールデンウイークは「情報経済の鉄則」から読み始めたいと思います。
出所:週刊東洋経済 2021.4.10 第一特集マルクス vs.ケインズ「山形浩生が選ぶ「今知るべき 経済思想」12冊」