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行動経済学のすすめ

行動経済学は、経済学と心理学の原理を組み合わせた学問です。従来の経済学は、人間の行動が常に合理的であるという前提で構築されています。実際には、私たち人間は感情や認知の歪みにより、常に合理的に行動するわけではありません。この行動経済学は20世紀半ば以降に急速に発展を遂げた新しい学問で、これまで3人のノーベル経済学賞を出しています。

私たちが合理的ではない例をあげてみましょう。例えば、自分が稼いだ100万円と、ギャンブルで当てた100万円は、同じ100万円でも意味合いが違います。合理的に考えれば、どのような手段で獲得したものであろうが、100万円は100万円です。しかし、私たちは100万円を使う際に、その獲得手段に影響を受けることがあります。これを「あぶく銭効果」といいます。従来の経済学では、100万円は100万円としかとらえることはできません。

私たちの行動は意思決定の連続です。ちょっとしたすきま時間に「ネットフリックスを開く」。このとき、意識的であれ、無意識的であれ、「ネットフリックスを開く」という行動は、私たちが「ネットフリックスを観よう」という意思決定を行った結果です。そして、「映画Xを観よう」と「映画Xをクリックする」としたら、それはやはり、私たちが「映画Xを観よう」という意思決定をした結果なわけです。

「なぜ、人はそのように意思決定するのか?」そのメカニズムを解明することで、その結果である「なぜ、人はそのように行動するのか?」が理解できます。そして大切なことは、行動経済学の前提にあるのは「人間は非合理な生き物」であるということです。

脳はインプットされた情報を処理します。その情報処理の方法に「クセ」があります。これを「認知のクセ」といいます。エール大学のシェーン・フレデリックが考案した認知反射テスト(Cognitive Reflection Test, CRT)には、特に有名な3つの問題があります。以下がその3つの問題です。ちょっと考えて答えを書き出してみてください。

1.バットとボールの問題:
バットとボールを合わせて1.10ドルで購入しました。バットはボールよりも1ドル高いです。ボールの値段はいくらですか?

2.製造機の問題:
5台の機械が5分で5個の製品を作る場合、100台の機械が100個の製品を作るのにかかる時間はどれくらいですか?

3.湖の蓮の問題:
湖に蓮の葉があり、その数は毎日倍になります。蓮の葉が湖を覆うのに48日かかりました。湖が半分覆われるのは何日目ですか?

さて、あなたの答えはどうでしょうか?これらの問題は、直感と論理的思考のバランスを調べるのに適しています。答えは、「ボール10セント」、「100分」、「24日」だとしたら、あなたは、間違っています。私たちは、しばしば直感で物事を考えがちです。この認知のクセによって非合理な意思決定をしてしまうのです。ちなみに、正解は、「ボールは5セント」、「5分」、「47日」です。

米国の大学生のテストの結果で、成績トップはMIT(マサチューセッツ工科大学)で平均点は2.18点、全問正解率は48%でした。2位以下は接戦でプリンストン大学は平均1.63点で全問正解率が26%、ハーバード大学は平均1.43点で全問正解率は20%となっています。米国の一流大学の学生の正解率をみて安心したのではないでしょうか。直感的な答えはしばしば間違っており、より深く考えることで正しい答えにたどり着くことができます。

行動経済学は、私たちの日常の意思決定に深く関わっています。従来の経済学が見落としている非合理性や認知の歪みを理解することで、私たちはより賢い選択をすることができます。この学問は、個人の行動だけでなくビジネス戦略にも大きな影響を与えます。消費者の行動を深く理解することで、効果的なマーケティング戦略を立てることが可能になります。

行動経済学を学ぶことは、自分自身の行動を客観的に見つめ直し、直感に頼るだけでなく、より深く考えることの重要性を教えてくれます。それは、私たち自身と周囲の世界をより良く理解し、賢い選択をするための重要な道具となるのです。まずは、この書籍「行動経済学が最強の学問である」を読むことをお薦めします。

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