家具販売大手のニトリホールディングス(以下ニトリ)は、2020年12月末にTOBを完了し、島忠を傘下に収めました。ニトリの2021年2月期の売上高は、7169億円(前期比+11.6%)、営業利益は1376億円(前期比+28.1%)です。営業利益率は前期から2.2%プラスの19.2%ですから驚きの収益力です。これでニトリは34期連続で増収増益を達成したことになります。ちなみにこの数字には、島忠は含まれていません。
上場廃止となった島忠の近年の業績を振り返ってみましょう。昨年2020年8月期の売上高は1535億円(前期比+4.9%)、営業利益は96億円(前期比+6.7%)と巣ごもり消費の需要を取り込み増収増益となっています。ところが営業利益率は6.3%とニトリと比較すると大きく見劣りします。
これは、ニトリの商品の9割超がPB(プライベートブランド)を占めるのに対して、島忠は他社からの仕入れ商品が中心だからです。このことは、売上総利益率(粗利率)の違いに出ています。2021年2月期のニトリの売上総利益率は57.4%です。これに対して、島忠は33.7%(20年8月期)と20%以上も低い数値となっています。
3月の決算説明会で、似鳥会長から「島忠の家具は正直に言って赤字」という発言があったといいます。島忠の一部店舗では、家具売り場に、ニトリのソファやベッド、ダイニングセットが並び始めました。今後は家具はニトリのPBに置き換えられ、ニトリの生産ノウハウ、商品開発力を使って、島忠独自のPB商品がホームセンターに並ぶことになるでしょう。すでに、ニトリは島忠の再生に向けて「5カ年計画」を掲げています。島忠の経常利益率を2020年8月期の6.6%から、5年後の26年2月期には12%まで高めるというものです。
ニトリは、店内のレイアウト、商品の陳列方法、商品の受発注まで、すべて本部が決めています。いわゆるチェーンストア方式を徹底するニトリと売り場づくりはそれぞれの店舗の裁量が大きかった島忠とでは、社風も業務プロセスも大きく異なります。島忠社員のホームセンターの知見をうまく取り込みながら、「ニトリ方式」を浸透させ統合効果を出していけるかどうか。今後のニトリの動向に注目したいと思います。