スキルマトリックスとは、取締役の持つスキル(専門性)を一覧表にしたものです。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードで開示が促されたことから、ここにきて開示する企業も一気に増えています。三井住友信託銀行によれば、2022年5月に招集通知を開示したプライム上場企業の9割以上がスキルマトリックスを掲載していたといいます。
取締役のスキルとしてどのような項目を開示するかは企業に任されています。「企業経営」「グローバル」「会計・財務」「DX」「ガバナンス」といった項目をあげる企業が一般的です。
ニトリホールディングスのスキルマトリックスをみると、「現状否定、変化・挑戦」という項目があり、似鳥会長だけでなく、すべての社内取締役に〇がついています。と思いきや、ニトリが買収した島忠ホームズの社長の岡野氏だけ、ついていません。これは、ご本人が遠慮してつけなかったということでしょうか。
ニトリホールディングスの場合、各取締役が保有するスキルのうち、主なもの7つと制限しています。とはいうものの、社内取締役7人全員が「財務会計、税務」に〇がついていないのは驚きです。社外役員のオリックスの宮内氏も「財務会計、税務」に〇がついていませんから「なんだろうなぁ」と首をかしげてしまいます。
一方、三菱商事の場合は、事業経営・組織運営、地政学・地域戦略、イノベーション・デジタル、人材戦略、ESG、リスクマネジメントの全ての項目に〇がついているのは、取締役会長と代表取締役社長のお二人です。このお二人は、イノベーション・デジタルにも知見がおありのようですから、三菱商事も安泰ですね。大手商社でパーフェクな人は他にもいます。伊藤忠商事の岡藤会長CEO、取締役副会長、代表取締役社長COOの3名です。
いずれにせよ、これらの方々が自分のスキルマトリックスのすべてに〇をつけると言ったとしたら、自信過剰なのではと突っ込みたくなります。反対に事務方がトップに忖度して全部に〇をつけているのだとしたら、それはそれで社内の風通しが今一つということでしょう。こうして、数社みるだけでも、スキルマトリックスは本来の役割を果たしていないように思えます。ただ、図らずも、企業の体質を垣間見せてくれるものとしては役立っているともいえます。