ニデック(旧日本電産)が東証スタンダード上場の工作機械メーカー、TAKISAWAに対して「同意なき」買収の提案を行いました。それが業界や株式市場で大きな話題となっています。TAKISAWAは、岡山県を地盤とする中堅企業で、自動車部品などを加工する旋盤の分野で高い技術力を持ちます。
工作機械は日本の産業界の中でも旧態依然とした業界だといいます。そんな業界に2021年に参入したのがニデックです。三菱重工から買収した三菱重工工作機械(現ニデックマシンツール)を、あっという間に赤字から黒字導いた実績があります。「こんなに工作機械はもうかるんか」とニデックの会長兼CEOの永守氏も驚いたといいます。
TAKISAWAとの水面下での最初の買収提案は、TAKISAWAからけんもほろろに断られたと永守氏は記者会見で述べています。「TOBの価格の2600円を役員が断るのはおかしい」と、永守氏は酷評しています。確かに、TAKISAWAの株価を見ると、今年はずっと1000円台前半をキープしていましたから、永守氏の言うことも納得できます。
買収提案のリリースでは、「過去10年間のTAKISAWAの中期経営計画の計画未達状況、及び競争力を高めている海外メーカとの競争等の厳しい事業環境を考えると、2022年5月13日付公表の中期経営計画「Value-Up 2024」で掲げられている、2024 年度売上高 310 億円、営業利益率 8%の目標値は、有力な工作機械メーカであるTAKISAWAといえども単独で達成することは極めて難しいものと判断しております」と一刀両断しています。
なぜ、TAKISAWAは、ニデックの買収提案を拒否したのでしょうか。TAKISAWAの大株主である中国銀行出身の社外取締役の一人が反対の意向を示しているのではと噂されています。もしTAKISAWAがニデックによって買収されると、中国銀行は社外取締役のポストはもちろん、大きな融資先も失うわけです。このような中、金融機関の間では、TAKISAWAの3位の株主として4.7%の株を保有するファナックがホワイトナイトになるのではないかという期待の声も聞こえています。
ニデックは既に、先述した三菱重工工作機械やマシニングセンタに強いOKK(現ニデックオーケーケー)などを買収しており、今回のTAKISAWAの買収提案も、その一環として「総合工作機械メーカー」としての地位を強化することを目指していると考えられます。業界関係者からは、永守氏の挑戦的な提案に賛否両論の声が上がっています。
一方、経済産業省は、新たな「企業買収における行動指針(案)」を策定中です。この新指針の核心は、「過度な買収防衛を控え、必要なM&Aを促進する」というものです。従来、日本の多くの企業は買収提案に対して消極的で、その結果、数多くの企業が株価が低いままに放置されている状態です。この現状への危機感が、経産省の新しい動きを引き起こしました。ニデックの買収の動きも、この新しい潮流の中で大きな注目を浴びており、市場関係者からは「日本の資本市場の未来が変わる可能性がある」との前向きな声が上がっています。これからも、ニデックとTAKISAWAの動向に注目していきたいです。
「毎週、ブログをお届けします!無料のメールマガジンに登録するには、下のフォームにメールアドレスを入力して登録ボタンをクリックしてください。」