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息子は通う、投資家は疑う?chocoZAP成功の死角

「最近、運動している?」と息子に聞くと、迷いなく「chocoZAPに通ってるよ」との返事が返ってきました。私と同様に飽きっぽいところもある彼が、これほど続いているのは驚きです。コンビニのような手軽さで、月額2,980円。服装も自由で、思い立ったらすぐ行ける。その気軽さがハマったのかもしれません。

そんなchocoZAPを展開するRIZAPグループですが、実は今、注目すべき局面に差し掛かっています。一時は赤字続きで経営の継続すら危ぶまれた同社ですが、直近の決算では黒字化を果たし、再び光が差し込みつつあります。2025年3月期第3四半期には、売上収益が1,307億円(前年同期比6.3%増)、営業利益は1.8億円の黒字に転換。第3四半期単体では27億円の営業黒字と、確かに回復基調にあることは間違いありません。

しかし、見方を変えると、RIZAPグループの足元には依然として不安材料も多く残っています。例えば、自己資本比率はようやく12%台に回復したとはいえ、依然として脆弱な水準です。借入依存度も高く、資金繰りのためのリファイナンス(借換え)に頼らざるを得ない状況が続いています。営業活動によるキャッシュフローは回復してきているものの、巨額の投資を支えるにはまだ十分とは言えず、慎重な運営が求められています。

また、市場の評価はまだ厳しく、株価は低空飛行を続けています。業績が好転しつつあるにもかかわらず、決算発表後に株価が急落するなど、期待とのギャップがあるのが現状です。背景には、急速に増やした会員の今後の動向への不安があります。実際、chocoZAPでは休会制度の見直しなどもあり、今後の退会率上昇が意識され始めています。マーケットはこの点を見逃しておらず、成長ストーリーが続くかどうかに慎重な姿勢を崩していません。

chocoZAPの出店戦略にも注目が必要です。現在はすべて直営で展開しており、2027年までに3,800店舗という非常に高い目標を掲げています。しかし、この拡大スピードを維持するには、相応の資金とリソースが必要です。無人・低コストを売りにしているとはいえ、実際には機器の故障対応や清掃体制強化、サポート人材の巡回配置など、運営面での課題が顕在化しています。想定外のメンテナンスコストがかさむ中、今後は「量」から「質」への転換が迫られているようにも見えます。


出所:2025年3月期 第3四半期決算補足資料

もっとも、RIZAP側もこうした課題を認識しており、出店ペースや広告投資の見直し、セルフメンテナンスやサポートセンターの強化などを通じて、収益構造の安定化を図ろうとしています。こうした“攻め”から“整える”フェーズへの移行がうまくいけば、将来の成長持続性も現実味を帯びてくるはずです。

企業の成長には光と影の両方があるものです。RIZAPグループは、chocoZAPという強力な成長エンジンを得て、確かに再起をかけた一歩を踏み出しました。しかしその足元は、まだまだ盤石とは言えず、試されるフェーズが続きます。これからも、注視していきたいと思います。

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