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再建への賭け。マックハウス、約20.5億円調達の裏側

2024年10月のTOB(株式公開買付け)により、新たな親会社のもとで再スタートを切った株式会社マックハウス。しかし、再建に向けた本当の勝負はここからでした。7期連続の赤字という厳しい経営状況を打開すべく、同社は2025年1月、矢継ぎ早に次なる一手となる大規模な資金調達策を発表しました。

今回は、この約20.5億円(あくまでも見込み)の資金調達がどのような目的で行われ、その裏でどのようなシナリオが描かれていたのかを紐解きます。調達資金の主な使い道は、過去のしがらみである、かつての親会社チヨダからの借入金の返済(9億円)、DX化に向けた設備投資(3.5億円)、そして未来の成長の核となるM&A・新規事業(8億円)の3本柱です。

そして、この大規模な資金調達は、性質の異なる2種類の新株予約権を組み合わせた設計になっています。短期・確実な調達を狙う投資ファンド向けの「MSワラント」と、親会社「Gファンド」による中長期的なコミットメントを示す新株予約権を組み合わせたものです。
※参考ブログ「MSワラントは悪魔の資金調達なのか

一見すると、マックハウスが必死に練り上げた再建策のように見えます。しかし、開示資料を深く読んでいくと、この一連のスキームの裏には、新たな親会社であるGファンドが描いた周到なシナリオの存在が浮かび上がってきます。

TOBの価格交渉をマックハウス不在のまま主導したのを始め、事業再建の核となる業務提携、そして今回の資金調達スキームの提案に至るまで、Gファンドが一貫して全体の設計者として動いている様子が想像できます。

Gファンドのシナリオは、投資ファンドの再生手法として極めて巧みです。Gファンドは、まず約3億円という投資でマックハウスの支配権を取得しました。そして、自らは追加で約132万円(+将来の約6億円)を拠出しつつ、外部投資家から約14.7億円を調達する道筋をつけ、合計約20.5億円の資金をマックハウスに投入する計画を描きました。

この資金で、過去のしがらみであるチヨダへの借入金(9億円)を返済し、残りの資金で事業の立て直しを図る。Gファンドは、少ない自己資金をテコにして、マックハウスを再生させ、企業価値の向上を狙う戦略です。

もちろん、この再建策には代償も伴います。既存の株主は、最大で64.11%という大規模な株式の希薄化を受け入れなければなりません。長年の赤字から脱却し、成長戦略を実現できるのでしょうか。

このブログを書き終えようとしていた矢先、事態は急転しました。6月12日に「金融・投資事業」の開始を発表したマックハウスは、翌13日、再建資金の一部である5億円をビットコイン購入に充てると発表したのです。

なぜ、本業再建の最中に、ハイリスクな暗号資産投資なのか。その答えは、今回の資金調達の生命線であるMSワラントのスキーム自体が、機能不全に陥りかけていた可能性にあります。株価低迷により、計画していた資金が集まらない。この最悪の事態を回避するため、株価を刺激する「劇薬」として、ビットコイン投資という選択肢が浮上したのではないでしょうか。

果たしてこの一手は、「起死回生の一手」となるのか、それとも「無謀な賭け」に終わるのか。次回のブログでは、MSワラントの仕組みと株価の動向から、マックハウスの運命を左右するこの決断の裏側に、さらに深く迫ります。


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