私のゴールデンウイークは、読書三昧でした。今回ご紹介したい本は、400ページほどある「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」です。私が最初から最後まで読む本はそれほど多くはありません。ところがこの大作は一気に読んでしまいました。それくらい私にとっては刺激的だったのです。
国連の推計によれば、2050年までに日本の100歳以上人口は100万人を突破する見込みです。2007年に日本で生まれた子供の半分は107年以上生きることが予想され、今50歳未満の日本人は100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすつもりでいた方がいいというある意味ショッキングな文章で始まります。
※約100年前の1914年に生まれた人が100歳まで生きている確率は1%。だから、周りに100歳以上の人を見かけることは少ない。ところが2107年の世界では100歳以上の人が珍しくなくなる
長寿化の潮流の先頭を歩む日本は、世界に先駆けて新しい現実を突きつけられている国と言えます。この時代にあって、最も大きく変わることが求められるのは、他でもない私たち個人であるということを痛感させられます。
著者たちがロンドン・ビジネススクールのMBAプログラムの授業で100年ライフについて話すとき、学生たちに自分の人生のシナリオを考えさせるそうです。学生たちの頭に真っ先に浮かぶのはお金の問題。そこでこんな質問を投げかけるといいます。
「100歳まで生きるとして、勤労時代に毎年所得の約10%を貯蓄し、引退後は最終所得の50%相当の資金で毎年暮らしたいと考える場合、あなたは何歳で引退できるか?」
答えは80代です。長寿化の恩恵を最大限享受するためには、70代、ことによると80代まで働かなくてはならないというのです。
これからの数十年で労働市場に存在する職種は大きく入れ替わることが予想されます。人々の寿命が短く労働市場の変化が比較的小さかった時代には20代で知識とスキルを身につければ、そのあとは知識とスキルへの本格的な再投資をしなくても、キャリアを生き抜けたかもしれません。しかし、70代、80代まで働くとしたら、手持ちの知識、スキルだけでは生産性を保てません。再投資する必要があるというのです。
著者たちは、いままでの「教育を受ける→仕事をする→引退する」の3ステージだけではなく、未来はマルチステージ化するといいます。例えば、一生のうちでいくつかのキャリアを持つということが当たり前になるということです。
そして、多くのステージを生きる時代には、投資を怠ってはいけないと言います。新しい役割に合わせて自分のアイデンティティを変えるための投資、新しいライフスタイルを築くための投資、新しいスキルを身につけるための投資が必要なのです。
さらにマルチステージを生きる私たちに必要なことは長期の資金計画です。計画は自分と深く向き合わずして策定することは出来ません。自分が何を望んでいるのか、人生の設計がはっきりしていなければ、策定することは出来ないからです。
著者たちはこの本を次のような人たちのために書いたと述べています。
未来が過去の延長線上にないと気づいている人たち
未来の試練だけでなく可能性について知りたい人たち
自分の現在と未来の職業人生を好ましいものにしたい人たち
本書は、我々が長寿化を災厄ではなく恩恵にするために、どのように人生を築くべきかを考える手引きとなると思います。