一般社団法人 日本 IR 協議会は、2018年4月、第25回「IR 活動の実態調査」の結果をまとめました。2018年1月現在の全株式上場会社 3,707 社に対し、調査票を郵送。1,006 社からの回答を得たといいます(回収率 27.1%)。
この中で、IR 実施企業981社のうち、自社の資本コストの水準を認識している企業の割合は 49.0%(前回44.0%)とほぼ半数まで増加し、そのうち資本コストの計算根拠を有するとした企業の割合は60.1%(同 54.7%)でした。
この結果を受けて、同調査報告書では「企業が資本政策を語る際に資本コストを意識して説明し対話を深めようとする姿勢がより強まったことがうかがえる。」としています。しかしながら、改善はしているものの、まだまだの状況といわざるを得ません。
資本コストを意識せずしてIR活動などできるわけないからです。本来のIR活動の目的は、企業の株価を経営者が理解している企業の本来価値と一致させることにあります。(出典:マッキンゼー「企業価値評価 第5版」)
企業の株価が本来価値よりも高すぎれば、業績が明らかになるにつれて株価は下落することになるでしょう。株価維持のために短期的な手を打ち、結果として長期的な価値創造を阻害するかも知れません。また、株価が低すぎても、買収される危険性、経営者や従業員の士気の低下などの不利益が生じるわけです。
このように企業の株価と本来価値に差があると結果的に株主に大きな損失をもたらす可能性があるわけです。経営者が自社の本来価値を考えるのに資本コストへの理解が不可欠です。ところがIR 実施企業981社のうち、自社の資本コストの計算根拠があると答えている企業は3割(=49.0%×60.1%)に満たないわけですから驚きです。
改善しているとは言え、日本の上場企業にはまだまだファイナンスの考えが浸透しているとは言えないのですね。