今年もあと残るところ、わずかになりました。今回は年末年始の休みの日に読むべき本を取り上げたいと思います。今年はファイナンス、会計関連の書籍で素晴らしい本が何冊も出版されました。
その中でも私が一押しするのは「機会損失(東洋経済:清水勝彦著)」です。私が行ったビジネススクールの教授はこの「機会損失」をこう説明してくれました。MBA取得の投資対効果を考える場合に「投資」に該当するのは何か?私たちは学費や生活費を「投資」に相当するコストと考えます。ところが教授はそれだけではないと言ったのです。
それは、このMBA取得のために会社を辞めなかったら獲得できたであろう給料や成長をコストとして考えなくてはいけないと言ったのです。このように別の選択肢を選んだ場合に「得られたであろう便益」のことを機会損失というのことです。
著者の清水氏は言います。「機会損失を考えるとは、意思決定の基準、価値観を考えることに他ならない。」しかし、著者はこうも言うのです。「機会損失の本質的な問題は、「見えない」ことにあります。結果として、気をつけようと思っても、目の前の案件やプロジェクトに気を取られ、「他により重要な案件はないのだろうか」ということにまでなかなか注意が行き届きません。」
本当に重要なことは目に見えないことが多いのが世の中です。私たちは土の中にあって目に見えない根っこの部分、つまり根本的な議論よりも、目に見える枝葉末節な議論に終始しがちです。同じように、「何かをやること」による結果はよく見えますが、それによって見えなくなること、つまり、「やらなかったこと」や「できなくなったこと」がより重要であったりするわけです。
機会損失を意識することによって私たちは、より戦略的な意思決定と行動が出来るようになるでしょう。この本を読まないという意思決定はあなたにとって大きな機会損失となるに違いありません。お薦めします。