ソニーの業績が好調です。2018年3月期の連結営業利益は7,348億円と22年ぶりの最高益を更新しました。今期の2019年3月期は前期比18%増の営業利益8,700億円を見込んでいます。2021年3月期には営業利益1兆円突破を予想するアナリストも出てきたようです。かつては、エレクトロニクス事業の業績次第で損益が大きくバラついていたソニーですが、その収益構造は大きく変わってきています。
セグメント別の営業利益の推移をみてみましょう。ゲームと音楽が非常に好調であることがわかります。また、半導体は世界景気の影響を受けやすいと言われていますが、今期の見込は前期比減少するものの、まずまずです。モバイルの営業利益が▲950億円と心配ですが、ソニーはさらなるコスト削減に取り組み早期の黒字化を図るとコメントしています。こうしてみるとソニーはゲーム、音楽、金融で営業利益の62%を稼ぐ企業であることがわかります。
それでは、EVA(経済的付加価値)の観点から、ソニーの企業価値創造がどうなっているか見てみましょう。EVA(経済的付加価値、Economic Value Added)はスターン・スチュワート社の登録商標で、企業が一定期間にどれだけの価値を創造したかをみる指標です。言い換えれば、資本コスト以上の税引後営業利益を生み出しているかをみる指標とも言えます。ここでは、ざっくりEVAを計算してみましょう。ソニーのWACCは、5.6%と推定されます(下図ご参照)。
これに対して、ROIC(資産ベース)を計算すると2018年3月期は3.8%です。あくまでもざっくり計算ではありますが、EVAスプレッド(ROICとWACCの差)はマイナスとなっており、EVAは▲2,786億円であることがわかります。これは、1年間で資本コストを賄うだけの営業利益を稼ぐことが出来ていないことを意味します。言い換えれば、2,786億円企業価値を毀損していると言えます。
前期よりもさらに営業利益を積み上げる今期はどうでしょうか。前期比18%増の8700億円にしたとしても、ROICは、4.3%です。残念ながら、EVAは▲2,138億円とマイナスなのです。ちなみに同社がEVAをプラスにするためには、営業利益8,700億円のレベルでは到底足りず、1兆1,000億円以上の営業利益が必要だと考えられます。真の意味でのソニー復活は依然として道半ばといえそうです。