米テック企業「GAFA」にマイクロソフトを加えた「GAFAM」。先月、その5社の株式時価総額の合計がコロナ禍を機に東証1部上場企業(2170社)のそれを一気に上回ったという報道がありました。テック企業の市場支配力の高まりはどのような影響をアメリカ経済、ひいては世界に与えているのでしょうか。
大きなヒントを与えてくれたのは、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者であるスティグリッツの「プレグレッシブ キャピタリズム」です。スティグリッツの主張はその原題である”PEOPLE, POWER, AND PROFITS”がより表していると言えるでしょう。
私が米国のビジネススクールで聴講した経済学の授業では「アメリカ経済では、なるべく低いコストでなるべくよい製品やサービスを消費者に提供しようとする無数の企業が容赦ないイノベーション競争を展開している」と説明されていました。それから20年近くたった今、アメリカ経済は全く異なる様相を見せています。
スティグリッツは言います。『資本主義の理論的基盤とされてきたアダム・スミスの言う「見えざる手」がなぜ見えないのかを私たちはようやく理解した。そんなものは存在しないからだ。たいていの場合、企業のインセンティブは、より優れた製品をつくることではなく、市場支配力を獲得することにある。市場支配力は価格を上昇させ、賃金を低下させるなど消費者や労働者を搾取する。さらに市場支配力は政治権力と化す。現在のアメリカのように市場支配力や富が偏在していては、真の民主主義は実現できない。』
本書は、国富を真に生み出すものが何かを示し、経済を強化しながらその利益を公平に分配していくにはどうすればいいのか、その具体的な政策が提案されています。コロナでいっそう浮き彫りになった人種差別や貧困の問題は、アメリカだけの問題では決してありません。素晴らしい日本の未来を創るためにも読むべき一冊だと思います。