GAFA(ガーファ)と呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなどの米国Tech企業が市場を独占し、競争環境をゆがめているという指摘が以前からありました。7月29日、米議会下院の司法委員会は、GAFA4社のCEOを呼んで公聴会を開き、反競争的な行為を指摘しました。議員と4人のCEOとの間では、5時間半もの長い時間、激しい論戦が交わされたようです。
各社トップは懸命に「独占」を否定しています。公聴会の最後には委員長から「分割」も示唆するような発言もありました。そもそも、なぜ企業が市場を独占してはいけないのでしょうか。市場支配力がある企業は、その力がなければできないような高い価格を設定するなど、さまざまな方法で消費者を搾取することができます。また、消費者だけでなく、労働者も苦しめます。市場支配力がなければできないような低い賃金を設定することもできるからです。さらに市場支配力は企業に超過利潤をもたらし、経済の格差につながります。※詳細は「プログレッシブ キャピタリズム」をお読みください
「競争がない市場は健全ではない」と私たちが考えたとしても、これらGAFAの提供する製品やサービスの利用をやめることはできないのも確かです。なぜ、これほどまでに私たちの心をとらえるのでしょうか。そのヒントはベストセラー「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」にあります。著者のニューヨーク大学スターン経営大学院教授スコット・ギャロウェイ氏はこう言います。「成功するビジネスはどれも、体の三つの部位(脳、心、性器)のどれかに訴えかけるものだ」
脳に訴えるのはグーグルとアマゾンです。グーグルのネット検索は、私たちの知りたいという欲求を瞬時に満たしてくれます。また、アマゾンはより多くのものを手に入れたいという欲求を満たしてくれます。アマゾンの利便性が私たちの狩猟・採集本能をくすぐるのです。
心に訴えるのはフェイスブックです。人間は社会的な生き物であり、1人では生きられません。フェイスブックは私たちが求める他者とのつながりを大きな収益源に変えたのです。
性器に訴えるのはアップルです。アップルは単なるコンピュータ企業から「高級ブランド」への脱皮に成功しました。存在感を放つラグジュアリー・ブランドは性的な魅力を手に入れたいという私たちの気持ちに訴えます。いずれも、最新のテクノロジーを活用しながらも、太古からの人間の本能に訴えかけているのがGAFAのビジネス成功の秘訣なのです。
そして、これら4社が30日に発表した4~6月期決算。各社の業績は総じて市場予想を上回りました。中でも、アップルはiPhoneの販売が好調で売上高が4~6月期として過去最高となり、株価は史上最高値を更新しました。2020年7月末時点でのGAFA4社の時価総額の合計は、東証一部上場企業(2173社)の時価総額565兆円の8割に匹敵します。あまりにも大き過ぎるGAFAの動向から今後も目が離せません。