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ゾンビ企業の台頭

2019年2月9日付日経新聞によれば、邦銀による2018年末の国内貸出残高は500兆円を突破。これは、20年ぶりの高水準だそうです。

融資に占めるメガバンクの比率はこの20年間で64%から46%にまで下がっている状況です。メガバンクが活路を求めて海外展開を急いでいる一方で、今後の成長が見込めない国内にいる地銀が、金融緩和であふれたマネーを中小企業と不動産への融資に回しているのです。

地銀の関係者は、「金利収入を得るために返済能力に問題がある企業にも融資せざるを得ない状況にある」と言います。そこにはリスクに見合ったリターンを得るという経済合理性からはかけ離れた世界があります。

金融緩和が引き起こしたこの状況は何も日本だけの問題ではありません。国際決済銀行(BIS)が昨年9月に”The rise of zombie firms: causes and consequences(ゾンビ企業の台頭:原因と結果)”と題する報告書を発表しました。BISはゾンビ企業を「10年以上存続し、過去3年間連続で借入金の利息を利益でまかなうことが出来ない企業」と定義しています。この論文の骨子は以下の3点です。

・ゾンビ企業の割合は1980年代後半から徐々に高まっている。日本を含む14カ国の上場企業のうち、ゾンビ企業の占める割合は1980年代後半の2%から2016年には12%になっている(下図の左側のグラフ:赤の折れ線)。

・ゾンビ企業の台頭は、金融緩和によるカネ余りを背景とする低金利にある。金融機関はできるだけ収益をあげようとリスクの高い企業にも融資しようとする。

・ゾンビ企業の生産性は低いにも関わらず、人材などの経営資源を囲い込む。それは健全な企業の経営資源の調達コストを引き上げる。その結果、経済全体の生産性の伸びを押し下げる。

金融緩和の負の側面はゾンビ企業の台頭です。あいかわらず、企業のサステナビリティを重んじる風潮があります。ただ、企業の事業継続はあくまでも、手段であって目的ではありません。顧客が求めない企業がいくらゾンビのように生きながらえても意味がないのです。

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