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トヨタ自動車の危機感

トヨタ自動車の回復が目をひきます。2020年10~12月期は売上高、当期純利益ともにコロナ流行前の水準を上回りました。3ヵ月の売上高は8兆1500億円(前年同期比+7%)、当期純利益は50%増加の8386億円です。半導体不足の影響などでホンダや日産自動車が今期の販売計画を下方修正している中、トヨタの一人勝ちが目を引きます。

一方でこんな動きもありました。2021年2月13日付日経新聞によれば、出光興産が年内にも超小型電気自動車(EV)の事業に参入することを発表しました。1台100万~150万円程度のEVを製造会社と組んで生産し、全国の給油所でカーシェアや実車販売に乗り出すといいます。自動車メーカー以外の本格的なEV進出は初めてです。

EVはテスラが高級車として市場を開拓してきました。最近、中国では50万円程度の小型EVが売れています。もちろん、トヨタ自動車も手をこまねいているわけではありません。2020年末から法人や自治体向けに小型EVを165万円以上で販売を始めています。2022年からは個人向けも扱う予定です。

この世界的なEV化の流れについて、トヨタ自動車の豊田社長はどう考えているのでしょうか。2020年12月10日に自工会(日本自動車工業会)会長としての記者会見がありました。豊田社長の発言の骨子は次の通りです。


電動化=EV化と考えてほしくはない。ガソリン車をなくせということでは自動車産業は成り立たない。乗用車すべてをEV化した場合、日本の発電能力がそもそも追いつかない。さらに充電インフラへの投資が約14兆円から37兆円必要である。日本には、オールバッテリのEV以外にハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、そして燃料電池車などが他国と比べてたくさん走っている。実際のところ、電動化率は世界第2位の35%である。日本がEVの後進国となってしまうのは、これらの車がEVと考えられていないからだ。


この豊田社長の発言をみると、トヨタ自動車が諸手を挙げてEV化にまい進するという印象ではありません。自動車産業は、その裾野の広さから250万人ちかくの雇用を支えています。ガソリン車からEV化が時代の流れになってしまうと、自動車産業が成り立たないと言うのも分からないではありません。

従来、自動車業界の参入障壁の高さの要因はエンジンの開発に高い技術力が必要だからと言われてきました。エンジンを中心に多くの部品を車体に詰め込むためには多くの部品メーカーと垂直統合型の協業関係をベースに設計開発する必要があります。これまでエンジンを開発できない会社は自動車を販売することは出来なかったのです。ところが電気自動車はエンジンを必要としません。また、ガソリン車に比べて部品点数は圧倒的に少ないと言われています。したがって、部品を購入して独自に設計して自動車を作ることができるのです。

つい先日には、アップルがEVを巡り、日本を含む複数の自動車メーカーに生産を打診しているとの報道がありました。工場を持たないファブレス経営で知られるアップルは、EVへの参入に際しても自分たちはデザインや設計に特化して、生産は自動車メーカーに委託する考えなのでしょう。それは、自動車メーカーは単なる「下請け」に成り下がることを意味します。いずれにしても、今後の自動車業界は、異業種さまざまな企業が入り乱れ、競争がますます激しくなるでしょう。王者のトヨタ自動車でさえも決して安穏としてはいられないのです。

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