2023年11月18日付日経新聞によれば、パナソニックホールディングス(HD)が自動車部品事業のパナソニックオートモーティブシステムズを米国のファンドに売却するそうです。この動きは、パナソニックが成長資金を確保し、電気自動車(EV)向け電池などの成長領域に重点を置くことを意図しています。
パナソニックオートは、1兆2975億円の売上高ですが、営業利益率は1.2%にとどまり、過去には赤字を経験しています。この売却により、パナソニックは低収益の事業を切り離し、より収益性の高い事業に経営資源を投下することができます。また、売却後もパナソニックグループの一員として社名やブランドを維持することで、ブランド価値の維持も図ります。
先述した通り、パナソニックHDは、EV電池事業に大規模な投資を行う計画を立てています。23年度の設備投資計画は7000億円に上り、その約半分は電池関連に充てられます。米国のインフレ抑制法(IRA)の追い風を受けて、北米の電池事業に集中投資する姿勢が鮮明になっています。
楠見雄規社長は、事業ポートフォリオの見直しについて、「当然のことながら、事業ポートフォリオの見直しや入れ替えはあくまで手段であり、目的は株主様やお客様、お取引先様、従業員を含む全てのステークホルダーの幸せ、そして、グループの価値向上です」と述べています。そして、楠見社長は、その実現のために、グループ共通戦略との適合性、環境への貢献、財務規律の順守などを基準に設定し、事業ポートフォリオの見直しを今年度中に方向付けし、順次実行していくとしています。
パナソニックは過去にも事業の売却や買収を繰り返しており、今回の動きは、より効率的で収益性の高い事業構造への移行を目指す一環と言えます。過去のプラズマテレビ事業の失敗から学び、自動車関連では電池に経営資源を集中する方針を打ち出しています。
この発表を受けて、パナソニックHDの株価は急騰しました。市場は、パナソニックの構造改革と将来の成長戦略に期待を寄せているようです。しかし、成功を収めるためには、パナソニックHDの楠見雄規社長がスピード感を持って次の手を打ち出すことが重要になります。
今回のパナソニックの自動車部品事業の売却は、企業が市場の変化に適応し、より収益性の高い事業に焦点を当てるためには、時に大きな決断が必要であることを示しています。決断とは「断つことを決する」ことです。EV電池への集中投資は、将来の成長と持続可能性に向けた重要な一歩と言えるでしょう。
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