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ホンダと日産、EV提携するも課題は山積み

2024年8月1日付、日産自動車とホンダは、EVの基礎技術に関する共同研究契約を締結したと発表しました。EVは「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」とも呼ばれ、ソフトウェアで制御される車です。EVやソフトウェア開発には巨額の資金が必要であり、共同で取り組めば両社にとって資金負担の軽減が期待されます。両社は車載OSの共同開発やバッテリー、e-Axle(電動車の駆動系)の共通化を進める計画です。

また、三菱自動車もこの提携に加わり、「3社連合」が動きだすことが決まりました。これにより、3社の世界販売台数は約850万台に達し、トヨタ自動車の約1100万台への新たな対抗馬が誕生することになります。

しかし、こうした協業にも課題が見え隠れしています。例えば、ホンダが日産に供給を検討していた小型ミニバン「フリード」やハイブリッドシステムについては、ホンダの原価の高さを日産が嫌ったため合意に至らなかったとされています。さらに、両社はEV開発の合弁会社設立を目指していたものの、協議の進展は遅く、共同研究契約にとどまったといいます。

ホンダ側の不満は大きく、ある関係者は「日産はプライドが高く、決断も遅い」と指摘しています(出所:選択8月号「ホンダと日産協業の内情」)。日産は「対等な関係」にこだわる一方で、ホンダは迅速な決断を求めているため、意見のすれ違いが続いています。両社の販売台数はほぼ対等ですが、収益力や財務力では大きな差があります。

ホンダの2024年3月期の営業利益は、1兆3820億円、営業利益率は6.8%でした。かたや日産自動車の営業利益は、5687億円とホンダの半分にもいきません。営業利益率は4.5%と収益力も十分ではありません。さらに足元では、ホンダの2024年4~6月期の営業利益は前年同期比9%増の4847億円と過去最高を記録しました。

一方、日産は99%減の10億円にとどまりました。23年度に日産の内田社長が受け取った役員報酬は6億5700万円、スティーブン・マ氏(CFO)は6億7600万円で、2人の報酬を合わせると日産の2024年4~6月期の営業利益10億円を上回るのですから、驚きです。

日産は北米市場での商品力不足から209億円の営業赤字を計上しており、業績回復の見込みは低いとされています。こうした業績を反映してか、日産の株価は低迷し、時価総額は約1兆4300億円と、ホンダの7兆円1000億円に大きく見劣りする形となっています。

業績面でいえば、日産とホンダでは、もはや「対等な関係」と言えません。こうした中、ホンダには日産を無視できない理由があります。それは、日産が筆頭株主である三菱自動車の存在です。強みとする地域もホンダが北米、三菱自動車は東南アジアと補完関係が成り立つのです。

最終的に、ホンダ主導で「3社連合」を進める可能性もあります。かつてルノーが日産を救済したように、ホンダが同様の役割を果たすかもしれません。今後、日産のメインバンクである、みずほ銀行の動向次第では、ホンダが日産をリードし、トヨタに対抗する新たな連合が誕生する可能性がないともいえません。

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