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日本ペイント、アジア企業の傘下に

日本ペイントホールディングスは、21日シンガポール塗料大手のウットラムグループの傘下に入ると発表しました。アジアにおける巨大な塗料大手が一緒になるわけです。プレスリリースには、こうあります。経営のミッションである「株主価値の最大化」に向けた攻めの経営を加速させるためには、「アジア一体化による成長基盤の構築」及び「今後の成長に資する財務基盤の強化」が必要です。

ウットラムが日本ペイントの第三者割当増資を引き受け、日本ペイントへの出資比率を現在の39.6%から58.7%に引き上げます。これと同時に両社の塗料事業を統合し、日本ペイントに集約する予定です。これまでアジア企業の傘下に入った日本企業は、台湾の鴻海精密工業に買収されたシャープや中国企業の子会社になったラオックスなどがあります。ただ、両社とも経営不振が続き、やむなく傘下に入ったという印象です。一方、日本ペイントは経営に行き詰まっているわけではなく、成長のために自らアジア企業の傘下に入ることを選んだと言えます。

両社は1960年代から塗料事業で協力関係にあり、合弁会社を通じてアジアで塗料事業を展開してきました。2014年にはウットラムが日本ペイントへの出資比率を14.5%から38.9%に引き上げています。そう考えると今回の買収劇は日本ペイントが自ら選んだわけではなく、ウットラムの描いた筋書き通りの役を演じているに過ぎないかも知れません。実際のところ、日本ペイント社長の田中氏は2019年にウットラムが社外から抜擢しています。

次第に出資比率を上げてきたウットラムの動きを「backdoor listing(裏口上場)」だと考えていた市場関係者もいたようです。裏口上場とは、未上場会社が、上場会社と合併して経営権を握り、上場審査を経ずに上場を達成することです。もちろん、今回の場合は日本ペイントは実質的に事業を継続しますから裏口上場にはあたりません。

ウットラムは、塗料事業のほか、不動産や投資事業を手がけるコングロマリット企業です。売上高年2千億円弱の塗料事業を日本ペイントにまとめて経営の効率化を図りたいのでしょう。一方、日本ペイントとしては、塗料事業をすべて引き受けることでさらなる成長が期待できることから社内、社外にも説明がつきやすかったと言えます。

日本ペイントは、今後も上場を維持するようです。ウットラムが60%近くの議決権を保有することになると、懸念されるのはコーポレート・ガバナンスの問題です。少数株主の利益に相反するような意思決定が可能となるからです。日経新聞には、田中社長が「少数株主の利益を確保したうえで、株主価値を最大化する案件だと考えている」と、第三者増資の意義を語ったとあります。それが本当なのかは、今後の同社の業績が雄弁に物語ってくれることでしょう。

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