伊勢の老舗食堂「ゑびや」は、翌日の1時間ごとの来店客数を9割以上の精度で当てることが出来るといいます。売上の過去データ、近隣でのイベント、周辺ホテルの宿泊数、インターネット上の口コミや天候といった十数項目のデータを集めて来店客数をはじき出します。どの項目が来店客数に最も影響しそうかをAIが機械学習し、日ごとや週ごとに重視する変数を変えていくといいます。
予測した来店客数をもとに、メニューごとの注文数がどれくらいになるかまでわかるというから驚きです。こうした予測データを活用し、仕入れの量を最適化することで、傷んだ肉や魚を廃棄することはほとんどなくなったというのです。
「ゑびや」は近い将来、来店客数に応じてメニュー価格までも変更するのではないでしょうか。需要と供給によって価格を変化させるダイナミックプライシングは従来はエアラインやホテルで活用されてきました。今後はますますいろいろな業界で導入されることでしょう。たとえば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも19年1月から、繁忙期と閑散期で入場料を変える新料金制を開始しました。
これらの背景にあるのは、AIによって精緻な需要予測が可能になってきたからです。過去の販売実績データなどをAIが学習することで需要予測の精度は高まり、販売状況に応じて瞬時に収益最大化が見込める最適価格が把握できるわけです。
このように、人の勘や経験に頼っていた需要予測にAIを使うことで、これまでにない位、精緻な予測ができるようになってきています。とはいえ、精緻な需要予測から何を行うのか、最終的に決定するのは人です。人間が行う仕事の半分がAIに奪われるという報告もありますが、あくまでもAIはツールであり、どう使うかは最終的に人が決定するものです。この点は忘れないようにしたいものです。
※参考 2019年9月17日付日経新聞「明日の客入り、98%当てる店 勘も経験もいらない未来の読み方(3)」