米国のIT業界をけん引するGAFA(ガーファと発音)は、プラットフォーマーとして、ひとくくりにされがちです。ところが、4社のビジネスの中身は全く違います。今回はムック本「徹底研究!!GAFA」に掲載された一橋大学大学院の楠木先生の記事を取り上げたいと思います。
楠木先生は各社の事業領域をリアル vs バーチャル、プロダクト vsインフラの2 軸で整理しています。これがとても分かりやすいのです。
出典:「徹底研究!!GAFA」
グーグル(G)とフェイスブック(F)の共通点は、いずれもリアルなオペレーションの必要のない情報を扱うビジネスをしているということです。つまり、アップル(AP)やアマゾン(Am)のように実体のあるハードウエアを作ったり、モノを仕入れ、販売するというリアルなオペレーションはしていません。
GとFのビジネスの実態は広告(ないしは販促手段の提供)です。実際のところ、Gの売上の86%、Fに至っては売上の98%が広告となっています。つまり、GとFのビジネスの本質は広告業なのです。
それでは、Gがインフラ、Fがプロダクトというのはどのような意味なのでしょうか。楠木先生はこう説明します。
Gは文字通り「情報技術の会社」だ。独自技術と広告ノウハウを武器にして、検索からアンドロイド、マップ、Gメール、クローム、ユーチューブとメディアを水平方向に拡大し、集客の間口を広げようというインフラ型の戦略である。
一方のFはフェイスブック(および買収したインスタグラム)という特定の集客装置に集中して広告収入を稼ぐ。Gのように多数の顧客接点を押さえて面を構築するのではなく、フェイスブックとインスタグラムという強力な「プロダクト」で一点突破し、それをテコに全面展開を図るという戦略だ。
出典:GAFAの戦略(楠木建著)の一部抜粋
それでは、APはどうでしょうか。APのビジネスの本質は製造業と言えるでしょう。iphoneをはじめとする独創的な「プロダクト」の力で稼いでいます。下図の通り、売上の60%以上がiphoneです。MacやiPad、その他の製品を入れれば、売上の86%がハードウエアなのです。
出典:アップル アニュアルレポート 作成:オントラック
一方、Amを楠木先生はこう説明します。
「小売りの会社」、「物流の会社」といってよい。情報だけでなく、リアルなモノのオペレーションに徹底的に踏み込み、水平かつ汎用的な小売りと物流のインフラを構築している。
出典:GAFAの戦略(楠木建著)の一部抜粋
下図の通り、クラウドのAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の成長が著しいと話題になっているものの、売上高に占める割合は10%に過ぎないことがわかります。広告などの収入はほぼありません。Amのビジネスの根幹は「小売り」なのです。
出典:アマゾン アニュアルレポート 作成:オントラック
このように各社の事業領域をリアル vs バーチャル、プロダクト vsインフラの2 軸で整理すると、各社の「売っているもの(価値)」は意外と単純であることがわかります。来年以降もGAFA各社の動向から目が離せません。
本年もご愛読いただき、有難うございました。よい年をお迎えください。