『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ(文春新書)』は、著者である齋藤ジン氏が約30年間にわたりヘッジファンドのアドバイザーとして培った知見を基に、現代の世界情勢と日本の将来について分析した一冊です。本書の主なテーマは、新自由主義の終焉と、それに伴う世界秩序の変化、そして日本に訪れるチャンスです。
齋藤氏は、東西冷戦後の世界を支えてきた新自由主義的な価値観が現在、各地で反発を受け、信頼を失いつつあると指摘しています。この変化は、トランプ現象やブレグジット、米中対立、ウクライナ戦争など、さまざまな現象の背景にあると述べています。これらの出来事は単発的なものではなく、新自由主義への反動として捉えるべきだとしています。
新自由主義の特徴を三つあげるとすれば、第一に「大きな政府」より「小さな政府」が善きものとされます。言い換えれば、政府による介入が少なければ、少ないほどよい、という考えです。
第二には、そこでは政府や政治に変わる”裁定者”の役割を「市場(マーケット)」にゆだねようとします。まさに「市場が一番よく知っている」という考え方です。
最後には、その世界では個人の権利や選択を尊重し、政府や宗教を始め、個人の生き方に干渉するものを最小化すべきとされます。
著者は、こうした新自由主義に対する信頼が揺らいでいる時が日本にとって大きなチャンスであると論じています。過去の「失われた30年」は、経済成長を犠牲にして雇用維持を選択した結果であり、これが現在の日本の強みとなっていると分析しています。
本書では、アメリカが今後、中国を抑制するために日本を強力なパートナーとして位置づける可能性があることが指摘されています。これは、過去の冷戦時代における日本やドイツの役割と類似しており、日本が再び有利な立場に立つチャンスがあると述べています。
また、アメリカは世界の覇権国として、ルールやレートを自由に変更できる立場にあるため、日本はアメリカとの同盟関係を強化し、次の30年間で有利なポジションを確保することが重要であると指摘しています。
本書は、世界の大きな潮流を理解し、日本の未来を考える上で非常に有益な一冊です。新自由主義の終焉とともに訪れる日本のチャンスを捉えるために、多くの示唆を与えてくれると思います。私はすでに3周目です。めちゃくちゃ、お薦めします。