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AI vs 教科書が読めない子どもたち

すでに、いろいろなところで話題になっている「AI vs 教科書が読めない子どもたち」。お読みになった方も多いかも知れません。

私も読んでみましたが、小中学生のお子さんをお持ち方はmust-readです。著者は国立情報学研究所教授の新井紀子氏。人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタです。

人工知能はすでにMARCH合格レベルであるとしながらも数学者である新井氏の以下の言葉には説得力があります。


AIの目覚ましい発達に目が眩んで忘れている方も多いと思いますが、コンピューターは計算機なのです。計算機ですから、できることは基本的には四則演算だけです。AIには、意味を理解できる仕組みが入っているわけではなくて、あくまで、「あたかも意味を理解しているようなふり」をしているのです。しかも、使っているのは足し算と掛け算だけです。


AIが人間と同等の知能を得るには、私たちの脳が意識無意識を問わずに考えることをすべて計算可能な数式に置き換える必要がある。ところが、今のAIの延長では、そして今の数学ではそれが不可能だと断言しています。

AIは文章を理解することが出来ない。例えば、人間には簡単に理解できてもAIには理解できないことにこんな例をあげています。「先日、岡山と広島に行ってきた」と「先日、岡田と広島に行ってきた」の意味の違いがAIは理解できない。

次に新井氏が我々に問いかけるのは、AIにできない仕事は、果たして多くの人に簡単にできる仕事なのだろうかということです。新井氏は全国25,000人の基礎的読解力を調査したのです。テストの例題をご紹介しましょう。


次の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性のAlexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexandraの愛称は(    )である。

①Alex  ②Alexander ③男性 ④女性


わざわざ問題にするようなことかと思うかも知れません。この文章は実際に教科書に使われているものです。正解はもちろん①です。ところが中学生の正答率はなんと38%だというのです。恥ずかしながら中三の娘も、ものの見事に間違えていました。パッと読んで④を選んだのです。無意識に愛称という言葉を読み飛ばしたんだと思います。進学校に通う高校生でも正解できたのは3人に2人だといいます。

読解力調査でわかったことは何か。新井氏が導き出した最悪のシナリオとは何か。そして教育への提言とは何か。科学者たる新井氏の誠実さがにじみ出てくる素晴らしい本だと思います。お薦めします。

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