イズミ、PL経営からBS経営へ

日経新聞によれば、スーパー業界6位、中四国地方で首位のイズミが店舗ごとのROIC(投下資本利益率)の導入の検討に入ったようです。山西泰明社長はROIC導入の狙いについて、こうコメントしています。「売上高が増えれば利益も増えるという考えが強かった。肥満体からの脱却が急務だ」

出所:業界動向Search.com オンラック作成、※スーパー関連部門の売上高で、イオンはGMS+SM事業、セブン&アイ・HDはスーパーストア事業 

言ってみれば、従来のPL経営からBS経営に大きく方針を転換するということです。イズミは中四国や九州でGMS「ゆめタウン」や食品スーパー「ゆめマート」などを手掛ける会社です。新規出店や買収などを通じ西日本で一大商圏を築いてきました。2018年2月期には6年連続で営業最高益を更新しました。ただ、従来の積極出店や買収で売上、利益を伸ばす戦術に限界が見えてきたということでしょう。

イズミの2021年2月期ROICは6.1%と前期と比較して改善しています(下図①)。ところが、これを売上高営業利益率と投下資本回転率に分解してみるとイズミの経営課題が見えてきます。売上規模はイズミよりも大きいものの、時価総額はほぼ同じであるライフコーポレーション(以下ライフ)と比較してみましょう。


出所:財務分析サイトValuationMatrix

ライフの2021年2月期ROICは11.7%とイズミよりも大きく上回っています(上図②)。売上高営業利益率はイズミが5.3%(図③)に対して、ライフの営業利益率は改善しているとはいえ、3.6%(図④)です。収益性の観点ではイズミに軍配があがります。

ROICの差は両社の投下資本回転率の差、つまり資本効率性にあることが容易にみてとれます。さらに分解していけば、ライフの有形固定資産回転率は5.1回とイズミの2倍以上あることがわかります(図⑤⑥)。有形固定資産回転率は、売上高を有形固定資産で割ることよって計算できます。有形固定資産をどれだけ効率的に売上高に結びつけられるかを示す指標です。イズミの店舗は土地や建物を含め自社物件が多いのに対して、首都圏と近畿圏が中心のライフの店舗はリース物件が多いことも一因かもしれません。

さらに注目すべきは、運転資本回転日数です。イズミの9.0日に対してライフは-19.0日です(図⑦⑧)。運転資本が回転日数がマイナスということは支払いよりも入金が早いことを意味します。つまり、資金繰り上、とても有利であることが言えます。これは、売上債権回転日数がイズミが22.5日対して、ライフ2.7日であることが主な原因です(図⑨⑩)。ライフはほぼ現金商売だということです。

イズミの幹部はこうコメントしています。「売上高拡大を急ぎバランスシートを犠牲にしてきた」これは裏を返せば、イズミが今後ROICを導入し、バランスシートを意識した経営に舵をきれば、さらに企業価値を高める余地があるとも言えます。今後のイズミの動向が楽しみです。

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