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WACC再び

ブログ「【第二弾】あなたはWACCを本当に理解しているか?」に関して読者から質問がありました。以下は質問メールの一部です。


わたしは、よくある間違いのとおりの計算をしてしまいました。。。
(株主資本コスト10%×1/2+負債コスト1%×1/2=5.5%)

ブログの解説のおかげで、これまで全く理解出来ていなかったレバードβとアンレバードβの意義がわかった気がします。

他方で私が5.5%と計算してしまったのは、WACCが最適資本構成に向けて下がり、そのあと上昇していくグラフのイメージ(下図)がインプットされていたためです。すなわち、負債比率(D/E比率)を上げれば、一定の段階まではWACCが下がると理解していました。


出所「実況!ビジネス力養成講義 ファイナンス(石野雄一著)

今回のブログの解説では、資本構成が変わっても、WACCは変化しませんでしたが、何故、グラフのようにWACCが下がらないのでしょうか?


ブログで取り上げたMM理論の第二命題とは「株主資本コストは負債比率(D/E比率)に比例して上昇する」ということでした。負債比率が高くなれば、デットの支払利息負担が増加し、株主にとってのリスクが高まります。その結果、株主は高い収益率を要求するようになります。下図のように、負債比率が高くなるにつれ、コストの低い負債の割合が高くなりますが、株主資本コストが上昇するため、WACCは一定になるのです。


出所「基本から本格的に学ぶ人のためのファイナンス入門(手嶋宜之著)


ブログでは法人税を考慮していません。法人税がある場合も、負債比率(D/E比率)に比例して株主資本コストは上昇します。ただし、負債の節税効果があることから、負債比率(D/E比率)とともに、WACCは曲線的に低下します(下図)。MMは最初の論文を発表したあとで負債の節税効果を考慮すると企業価値を最大化する負債比率は100%であると修正しています。

出所「基本から本格的に学ぶ人のためのファイナンス入門(手嶋宜之著)

もちろん、MM理論がいう100%の負債比率は財務破綻コストを考慮していません。企業が負債を増やすとWACCは下がります。ところがある水準を超えると、負債増加によるメリット(節税効果)とデメリット(財務破綻コスト)がバランスします。その負債比率こそがWACCが最小となる最適資本構成といえます。そのあとは、負債を増やすことのデメリットがメリットを上回り、WACCは上昇することになります。その結果、先のメールにあるイメージ図のような曲線を描くことになるのです。

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