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企業価値を脅かすディスシナジー

ローランドディージー(DG)は、業務用プリンターを製造する企業です。その売上540億円強の同社が、注目されています。ローランドDGがブラザー工業から「同意なき買収提案」を受けているからです。

2024年4月26日付日経新聞によれば、そのローランドDGが、米投資ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズと進めるMBO(経営陣が参加する買収)のTOB(株式公開買い付け)の価格を5035円から5370円に引き上げると発表しました。これは対抗企業であるブラザー工業の提案した5200円を上回るものです。

この発表があった4月26日、ローランドDGの株価は前日比で3%上昇し、5490円で取引を終えました。5月2日には、株価はさらに上昇し、5580円をつけています。株式市場はブラザー工業がさらなる価格引き上げを行う可能性に期待を寄せています。

先述したように、ローランドDGはMBOによる非公開化を目指しており、TOBの期限を5月15日まで延長しました。一方でブラザー工業はローランドDGの新たな価格や発表内容を精査し、TOB期限までに今後の対応を発表する見込みです。

ローランドDGの常務執行役員、小川氏は日経ビジネスの取材に対して、ブラザー工業による同意なき買収提案に対する懸念を語りました。特に、ローランドDGが製造する産業用プリンターの主要部品である「ヘッド」の調達に大きな問題が発生する可能性があると指摘しています。

現在、ヘッド部品の約80%は、ブラザー工業と競合関係にあるA社から調達しており、ブラザー工業の傘下に入ることで、この重要なサプライヤーとの戦略的パートナーシップに悪影響を及ぼす可能性があるというのです。

実際に、「当社がブラザー工業の傘下に入れば現在の提携関係は維持できない」というサプライヤーA社の意向を確認しています。ブラザー工業の傘下では、26年12月期の営業利益で50億円もディスシナジーが発生するという試算までしています。企業価値がどの程度毀損されてしまうかを定量化している点は評価できます。

また、同社の労働組合員の8割超がブラザー工業の買収に反対しているという報道もあります。その背景に過去にブラザー工業から「ヘッド」を仕入たときに品質問題が発生したということがあるようです。

このようなこともあり、ローランドDGは自社の技術基盤とサプライチェーンの安定性を守るため、ブラザー工業の買収提案に対して、非常に慎重な姿勢を取っています。今後も、ローランドDGとブラザー工業の動向を注視していきたいと思います。

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