新生銀行が訴える「強圧性」とは

SBIホールディングス(以下SBIHD)による新生銀行へのTOB(株式公開買付け)が、国内銀行界で初の敵対的買収に発展しました。新生銀行の取締役会はこのTOBに対して、以下を理由として反対の意見を表明しています。

・本公開買付けは、実質的な支配権の取得を企図していながら、買付け数に上限(48%)のある部分買い付けであり、残存株主に不利益が生じること
・本公開買付価格(2000円)は、プレミアムを加重平均した場合には低水準であり、また、当行の本源的価値を反映した価格と考えられないこと

新生銀行が今回のTOB賛同に転じる条件としたのが、48%としているSBIHDによる株式取得の上限撤廃です。残存株主に不利益が生じるというのが理由ですが、そう簡単にSBIHDが上限を撤廃できないことを新生銀行は分かった上のことでしょう。なぜなら、上限を撤廃すれば、銀行を傘下に持つSBIHDは、金融庁から銀行持ち株会社の認可を受ける必要があります。そうなれば、銀行本体に近い規制がかかり、銀行と並列となる子会社の業務範囲に制限がかかります。IT、バイオ、エネルギー産業といった非金融事業領域に活路を見出してきたSBIHDは、大きな戦略転換を求められることになります。

敵対的買収とは、現経営陣にとって敵対的であるに過ぎません。新生銀行の株主からすれば、どちらの経営者に新生銀行の経営を任せれば、企業価値が向上するかが関心事です。新生銀行は、残存株主に不利益が生じる理由として「強圧性」を上げています。今回の例でいえば、SBIHDが実質支配株主になることで、新生銀行の企業価値が低下すると考えている株主は、本来TOBに応募しないはずです。ところがTOBに反対の株主が経済的に不利になるにもかかわらず、TOBに応募せざるを得ない問題を「強圧性」といいます。

具体的に説明しましょう。例えば、あなたは新生銀行の株主価値を2400円だと考えています。公開買付価格(2000円)よりも高いと考えているわけです。一方で、SBIHDが実質支配株主になった場合は、株主価値は1800円に減少してしまうと考えています。あなたの選択肢とその場合の株主価値を表にしてみます。

出所:オントラック作成

TOBが成立した場合は、応募しても、しなくてもあなたにとっての株主価値は2400円から減少してしまいます。だからこそ、あなたは、TOBには反対しているわけです。ところが、TOBが成立した場合、あなたにとって「応募する」方が経済的に有利であることがわかります。TOBが成立しそうだと思うあなたはイヤイヤながらもTOBに応募することになります。この「強圧性」の問題は、今回のような部分買付けだから、生じるわけではありません。したがって、この「強圧性」を買い付け上限の撤廃の論拠とするのは適切かどうかわかりません。いずれにしましても、新生銀行の反対表明とTOB賛同条件に対して、SBIHDは2021年10月21日付サイト上で、買付け条件の撤廃ならびに公開買付価格の変更はないと明言しています。今後も本TOBの動向を注目していきたいと思います。

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