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企業間信用の費用と便益について考える

事業価値を高めるには、フリーキャッシュフローを増やす、資本コストを下げるという2つのアクションが考えられます。そして、フリーキャッシュフローを増やすには、売上を増やし、コストを下げ、営業利益を増やすことが必要です。また、運転資本の管理をきちんと行う必要もあります。つまり、売上債権や在庫を圧縮する一方で、支払債務を多くして、運転資本を減らすということです。仕入先への支払サイト(期間)を長くすることは、キャッシュフロー的(資金繰り)にはプラスの効果があります。でも、それで本当にいいのでしょうか。

出所:「実況! ビジネス力養成講義 ファイナンス(石野雄一著)

今回は企業間信用の費用と便益について考えてみたいと思います。企業間信用とは、売り手の企業が顧客に対して、前払いや現金支払ではなく、いわゆる掛け取引を許容することです。海外企業との取引で請求書に「2/10 net30」といった記載がされていることがあります。これは請求書の日付から10日以内に支払えば、2%の割引が受けられ、そうでなければ、30日以内に全額支払いを要求していることを意味します。売り手側の企業からすれば、回収をできるだけ早めるために、顧客が早く支払うように割引を提案するわけです。

企業間信用は、本質的には売り手側の企業が顧客へ資金を貸付するのと同じです。それでは、その費用はどのように考えればいいのでしょうか。あなたは、仕入先から100万円の商品を仕入れました。請求書には「2/10 net30」と記載があります。とりあえず、10日間は何も支払う必要はありませんから、あなたは仕入先から無利子で借りていることになります。10日の割引期間内に支払いをするなら、あなたが支払うのは98万円ですみます。もちろん、割引は使わないという選択肢もあります。その場合、残りの20日間(=30日-10日)は、支払うはずであった98万円を自由に使うことができます。ただし、20日後には100万円支払う必要があります。これは、あなたが仕入先から20日間、98万円を借りて2万円の利息を支払うのと同じことです。

20日間のローンの利子率は、2万円/98万円=2.04%になります。これは年率換算すれば、44.6%*に相当します。もし、あなたの調達コストがこの利率よりも低いのであれば、仕入先の割引を受け入れた方がいいということになります。* (1.0204)^(365/20)-1=44.6%

企業間信用はいくつかの点で買い手の企業にとって魅力的です。まず、たとえば銀行から借入の際に必要な書類が不要です。また、企業にとって必要なときに利用できる自由度の高い資金源でもあります。また、企業によっては唯一頼ることができる資金源かもしれません。私たちは、こうした企業間信用の便益と先述した費用を両面から比較検討する必要があるでしょう。

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