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ソフトバンクGの未来

11月6日、「ぼろぼろであります。真っ赤っかの大赤字」という孫正義氏の発言で始まったソフトバンクグループの決算説明会。2019年7~9月期の連結決算(国際会計基準)は営業利益が7,043億円の赤字(前年同期は7,057億円の黒字)、当期純利益は7,001億円の赤字(前年同期は5,264億円の黒字)となっています。

この結果に対して、孫氏自ら「4半期でこれだけの赤字を出したのは創業以来初めてのこと」と述べています。また、19年度上期(2019年9月30日に終了した6か月間)でも、以下の通り、156億円の営業赤字となり、当期純利益は4,216億円と前年同期比半減しています。

出所:ソフトバンクグループ決算説明会資料

営業赤字の原因はご存知、WeWork問題で昨年のビジョンファンド(SVF事業)の営業利益6,324億円にほぼ匹敵する金額5,726億円がマイナスになったことがわかります。

出所:ソフトバンクグループ決算説明会資料

WeWork問題に対して、孫氏は「これは私自身の投資の判断が色々な意味でまずかった。大いに反省している」と素直に認めています。ここで孫氏はこんな事実を明らかにします。ひとつは、この四半期で株主価値が1.4兆円増加していること、そしてSVF事業の累積投資成果はそれでも1.2兆円増加しているということです。

孫氏は好調な決算で終わった2019年3月期決算説明会のビデオを流します。孫氏がこう発言している場面です。

会計上の利益よりも、株主価値の方が重要である

好決算時のビデオをわざわざ流したのには理由があります。「株主価値が大事だ」と言うのは今に始まったことではないことを示すためです。今回も、孫氏はソフトバンクグループの唯一のモノサシは株主価値であることを強調しました。ソフトバンクGの株主価値が1.4兆円増えた原因は、保有株式の時価総額が2.0兆円増えたからです。

下図を見ると、SVF事業の時価総額が3.5兆円から3.2兆円に0.8兆円下がっています。一方で、アリババの時価総額が2.0兆円増加し、全体として保有株式の時価総額が2.0兆円増えていることがわかります。こうしてみると、孫氏が言うように「大勢に影響はない」ようにも見えてきます。

出所:ソフトバンクグループ決算説明会資料

今後の投資判断について、孫氏は「企業価値の物差しはFCF(フリーキャッシュフロー)である。今、FCFが出ていなくても、5年後、7年後に出てくるFCFをディスカウントして買うべきかどうかを判断している。WeWorkの件は大いに反省し、創業者のガバナンスについて我々が基準を設けてしっかりとやっていく」と話しています。

確かに、結果的に創業以来の赤字決算になりました。ただ、孫氏の姿勢には経営者として学ぶべきものがあると思います。それはプレゼンのうまさというだけではありません。反省すべきところは反省し、投資家の懸念に理解を示しつつ、その懸念に対しては前もって真摯に応える。そして、定量的にも株主価値、FCFというキーワードを出しつつ、きっちりと論理的に説明しています。こんなにも説明責任を果たしている経営者がどれだけいるでしょうか。

一方で、ソフトバンクグループのフリーキャッシュフロー(FCF:営業CF+投資CF)は7期連続マイナスです。普通はあり得ないことです。なぜなら、FCFがマイナスということは、投資活動が営業活動に結びついていないこと、あるいは営業活動に結びつくような投資活動が出来てないことを意味するからです。

出所:同社有価証券報告書からオントラック作成

そして、普通であれば、手元現金が減り続けることを意味するのです。ソフトバンクGが大丈夫なのは、孫氏の神通力(目利き力)を信頼して投資家が資金を出してきたからだと言えます。今回のWeWork問題で孫氏に対する投資家マインドがどう変化するかが、今後のソフトバンクGの未来を左右するのだと思います。

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