今回は、岡俊子氏の著書『図解&ストーリー「子会社売却」の意思決定』をご紹介したいと思います。今回ご紹介する本は、M&Aの中でも特に「子会社売却」に焦点を当てた興味深い内容を提供しています。本書は、実務的な視点とストーリーテリングを融合させた、とても分かりやすい一冊です。(岡俊子氏の著書『図解&ストーリー「資本コスト」入門』は、以前にこちらで紹介していますが、2025年1月には、第3版が発売されました)
架空の会社をモデルに、親会社が子会社を売却する意思決定プロセスをストーリー形式で解説している本書には、実際のM&Aプロセスにおいて直面する葛藤や判断が具体的に描かれています。そのため、私たち読者は実務の現場を想像しながら、リアルな意思決定の流れを学ぶことができます。
本書の特徴として挙げられるのは、なんといっても、ストーリーがリアルだということです。単なる理論の解説にとどまらず、事例や実例を基にしたストーリーテリングを通じて、読者に親しみやすい形で情報を提供しています。
特に、親会社がどのようにして子会社売却の決断を下すのか、その背景にある経営的視点が詳しく説明されています。さらに、売却の意向を親会社からつげられた子会社の経営陣の葛藤と気持ちの変化などは臨場感があります。私は思わず、子会社の寺田社長に感情移入してしまいました。
ストーリーの合間には、カーブアウト型M&Aの動向や事例、事業ポートフォリオの入れ替え、さらに売却時に直面する課題や要因について深掘りしています。具体的には、投資ファンドや海外企業との交渉といった、現場で必要となる知識が網羅されており、経営者や実務家にとって大いに役立つ内容となっています。
本書は主に最近増えているカーブアウト型M&Aを扱っています。不採算事業の売却と比較すると、以下のような違いがあります。
この『図解&ストーリー「子会社売却」の意思決定』は、M&Aの実務的な知識と理論的背景を兼ね備えた優れたガイドブックです。企業の意思決定における重要な視点を学びたい方にとって、必読の一冊だと思います。