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島忠買収の行方はいかに

ニトリホールディングス(以下ニトリ)が島忠獲得に向けて、TOB(株式公開買い付け)を実施すると10月29日に発表しました。これを受けて、すでに島忠に対してTOBを実施しているホームセンター業界2位のDCMホールディングス(以下DCM)はリリースを発表し、「島忠とは約5カ月にわたって相互の信頼関係を大切にし、お互いの事業価値を高めることについて慎重に協議を重ねてきた」こと、そして、「当社こそが島忠にとって、最もシナジー効果を発現しやすいベストパートナーであると確信している」とコメントしました。

ニトリは「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というロマンを掲げ、2022年までに1,000店舗、売上高1兆円、2032年までに3,000店舗、売上高3兆円を目指すというビジョンを発表しています。成長を加速するためにも、ニトリ創業者の似鳥昭雄会長はM&Aを前向きに考えているとかねてより発言してきました。実際のところ、買収までに至りませんでしたが、大塚家具、LIXILビバには関心を示していました。そんなニトリにとって、関東圏に約60店舗を展開する島忠は魅力的に映ったに違いありません。

DCMの提示しているTOB価格は1株あたり4200円です。総額では約1600億円になります。これは島忠の純資産1815億円(8月末)をも下回っています。買収後、DCMには約200億円の負ののれんが発生することになります。このTOB価格に対して、すでに島忠株主であるファンドが「島忠の本源的価値に対して割安ではないか」という書簡を島忠の岡野恭明社長あてに送ったといいます。

今回、ニトリが提示したTOB価格は1株当たり5500円です。これは、報道機関による憶測報道の影響を受けていないと考えられる2020年9月18日の島忠株価2878円に対して、91.1%ものプレミアムとなります。ファンドのみならず、他の既存株主にとっても魅力的なプレミアム水準と言えるでしょう。


出所:ニトリホールディングス2020年10月29日発表資料

株主価値算定結果をみると、ニトリがつけた5500円のTOB価格が突出して高いように見えます。「お値段以上」のニトリが、島忠の「価値以上」のお値段をつけていないとも限りませんが、一方のDCMは現在のところ、TOB価格4200円を維持する方向のようです。

島忠は「今後、ニトリの開示内容及び上記受領書面を精査したうえ、DCMのほか、ニトリとも誠実に協議等を行い、当社取締役会及び特別委員会において、当社の企業価値及び株主共同の利益の観点から慎重に検討を行った上、改めて当社の見解を公表させて頂く」とコメントしています。今後の島忠の動向から目が離せません。

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