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花王の成長戦略

花王の株価の低迷が続いています。株価はコロナ禍前の2018年10月の高値(9387円)の▲44%マイナスの5,231円(2022年4月28日終値)といった水準です。2019年12月期の業績は、連結売上高1兆5,022億円、営業利益2,117億円(営業利益率14.1%)と、それまでは7期連続で営業利益最高を更新していました。ところが、コロナ禍によるインバウンド需要消滅、原材料価格の高騰などによって、2021年12月期の連結売上高は1兆4,188億円、営業利益1,435億円(営業利益率10.1%)まで落ち込んでいます。

出所:花王株式会社 2021年12月期決算説明会資料 以下同様

花王にとっての重要指標であるEVAは、ピーク時の2018年12月期935億円から、2021年12月期は451億円と▲484億円と大きく落ち込んでいます。2021年12月期NOPAT(Net Operating Profit After Tax:税引後営業利益)が1,150億円とインバウンド需要消滅、コロナ禍消費減退により、対2018年12月期比で、▲412億円のマイナスとなったこと、さらに資本コストも在庫増や現金増などで72億円増加していることが原因です。

こうした花王にさらに追い打ちをかけるように3つの逆風が吹いていると花王の長谷部社長は日経ビジネスのインタビューに答えています。まずはコロナ禍で急拡大した電子商取引(EC)。アマゾンなど流通事業者の力が強まり、「安く」「速く」「大量に」製品を納めるようプレッシャーが高まっている。このままだとメーカーは「流通事業者の下請けになる」と長谷部社長は危機感を強めています。

第二に、環境問題。生態系に負荷をかけるマイクロプラスチックや気候変動問題によって、大量消費社会に欠かせない日用品を素早く生産することが「善」だった時代が終わりました。そして、最後に追い打ちをかけるのが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて青天井になりかねない原材料価格の高騰です。小売業界の圧力と原材料高に挟まれ、「いずれ次の商品を作る体力がなくなる。今までのやり方にしがみつけば、じり貧になるのは目に見えている」。長谷部社長はインタビューで本音を吐露しています。

こうした状況だからこそ、長谷部社長は、日用品メーカーから脱皮すべく、「Another Kao」を掛け声に過去とは違うビジネスモデルの構築に舵を切ったのです。花王は、これまで踏み込まなかったメディカル(治療・診断)領域への参入を目指すことを決断したのです。もちろん、後発組の花王が正面突破するのは難しいでしょう。そこで活用するのが日用品で培った肌表面や体内部までの人体計測技術だといいます。

既存のコア事業(Reborn Kao)では、トイレタリー14ブランド、化粧品13ブランドを統廃合するなど、ブランドマネジメントも見直します。先述したAnother Kaoを確立し、実績化すると同時に、売上高1000億~2000億円規模で利益率20%以上のM&Aの実施を計画しています。2025年12月期EVA1,000億円の達成なるか、今後の花王に注目していきたいと思います。

※参考:日経ビジネス「日用品に迫る三重苦 花王が探し始めた「もう一つ」の成長エンジン」

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