このブログをお読みになっている皆さんにはファイナンスと会計の違いは言うまでもないでしょう。そうです。時間軸の違いがあります。ファイナンスの時間軸は「未来」です。一方で、会計は「過去」を扱います。決算書(BS/PL)の数字はあくまでも過去の企業業績という「結果」です。当たり前のことですが、「結果」をいくら眺めても、残念ながら「未来」は見えてきません。
世の中はすべて原因と結果の法則(因果律)で成り立っているといえます。そして、原因と結果の順番が入れ替わることは決してありません。繰り返しになりますが、企業の業績という「結果」をいくら眺めても企業の「未来」は見えてきません。ところが、そのことを私たちはすぐ忘れてしまいます。私がしばしば原点に戻るために思い出す因果マトリックスをご紹介したいと思います。縦軸は「過去と未来」を表し、横軸は「原因と結果」を表しています。
出所:「ビジネスデューデリジェンスの実務 第4版」を参考にオントラック作成
多くの株式投資家は、右上の「Ⅰ.これまでに生み出した価値(BS/PL)」、つまり、過去の企業業績から企業の将来(右下)を予測しようとします。しかし、世の中の道理(因果律)から言って、「過去の結果」から「未来の結果」が生まれることはありません。「今期の売上実績が10億円と昨対比で10%と成長しているから、来期の売上高は少なくとも11億円はいくだろう」とはならないわけです。
私たちがやるべきは、「結果」を生んだ「原因」をさぐるということです。つまり、マトリックスの左上の「Ⅱ.これまでの価値を生むしくみ」を理解する必要があります。そして、その「原因」となるものが未来にどう変化するのかを見抜く必要があります。つまり、左下の「Ⅲ. これからの価値を生むしくみ」に行くのです。そして、最後に「Ⅳ. 企業が将来生み出す価値」を算定するという、一見すると遠回りに思えるプロセスをふむ必要があるのです。
私たちはややもすれば、目に見える、わかりやすい部分(結果)に目がいってしまいがちです。なぜなら「原因」は目に見えないからです。サン=テグジュペリの「星の王子様」の一節に「大切なことは、目に見えない」とあるように、本質的で重要なことほど、私たちの目には見えません。自分で探しにいく必要があるということなのです。