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買収効果はどう測る(2/2)

前回のブログでは、EPSの増減では買収効果を測ることはできないことを説明しました。では、買収の効果はどのように測定すればいいのでしょうか。結論から言えば、NPV法で効果を測ることになります。M&Aの買い手企業にとってのNPVは次のように表すことができます。

買い手企業にとってのNPV=買収によって獲得する価値-買収価格

NPV>0ならば、買収すべき、NPV<0ならば、買収は見送りとなるわけです。買収によって獲得する価値はどう考えればいいのでしょうか。M&Aのプロセスを順を追って見てみましょう。まずは、売り手企業が策定した事業計画(フリーキャッシュフロー)に基づいた価値を算定します。間違えてはいけないのは、このときに適用する資本コストは、買い手企業のWACC(資本コスト)ではなく、あくまでも売り手企業のWACCである点です。
出所:オントラック作成

一般的に売り手企業が策定した事業計画には売り手の意向が反映されているでしょう。そこで買い手企業は、デューデリジェンス(Due Diligence:DD)を実施します。デューデリとかDD(ディーディー)といいますが、財務デューデリや法務デューデリは聞いたことがあるかと思います。私はコンサルティング会社に在籍していた頃、ビジネスデューデリによく駆り出されました。ビジネスDDでは、事業内容や競争環境などを分析し、事業計画を精査して、対象会社の単独価値を算定するのです。この単独価値のことをスタンドアローンバリューと言います。言ってみれば、対象会社の本来の価値といえます。この価値には、買収後に創造されるであろうシナジー効果は含みません。

シナジー効果の価値は、買い手企業か売り手企業、あるいは両社のキャッシュフローの増加という形で現れます。買収によって獲得する価値は、売り手企業のスタンドアローンバリュー(100億円)にこのシナジー効果の価値(40億円)を加えたものになります。ここから、買収価格をマイナスしたものがNPVです。買収価格は売り手の市場価格(100億円)に買収プレミアム(30億円)を加えたものです。この例では、NPVは10億円と計算できることから、買収すべきとなるわけです。

売り手企業のスタンドアローンバリュー(単独価値)と市場価格が同じ場合、買い手企業の株主が獲得する価値(NPV)は、シナジー効果の価値が買収プレミアムより大きい場合にプラスになります。

買い手企業の株主が獲得する価値(NPV)=シナジー効果の価値-買収プレミアム

今回の例のように、買い手企業が買収プレミアムを30%支払う場合、買い手企業は、売り手企業の価値を少なくとも30%増やさないとNPV>0になりません。つまり、買い手企業の株主にとっては経済的メリットはないということになります。そう考えれば、M&Aが成功するのは、なかなかハードルが高いということがお分かりいただけると思います。

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