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RIZAP「負ののれん」のマジック

M&Aによって急成長してきたRIZAPは、11月14日の決算発表で2019年3月期の営業利益(国際会計基準)を230億円から▲33億円に下方修正しました。今後は新規M&Aの原則凍結、グループ会社の経営再建の早期完遂、成長事業へ経営資源集中を推し進めるとしています。

今年6月にカルビーからRIZAP入りした松本晃代表取締役が最高執行責任者(COO)から退任するという報道が10月にあり、拡大路線をつき進む瀬戸社長と、子会社の出血を止めることを優先すべきと主張する松本晃氏がケンカ別れかと思いましたが、どうやら違うようです。松本晃氏は「構造改革担当」となって引き続き、グループ会社の再建に注力する様子です。

今回、話題になっているのは、RIZAPの「負ののれん」です。「負ののれん」とは、買収先の純資産が買収金額(支払対価)を上回った場合の純資産と買収金額(支払対価)の差額です。そして、その差額(割安購入益)を割安に購入できたとして「その他の収益」に表示することになるのです。

この収益は、日本の会計基準では特別利益に計上されるのですが、国際会計基準を適用するRIZAPは営業利益の上に計上されるのです(下図ご参照)。

出典:同社2019年3月第2四半期決算説明会資料

ちなみに、RIZAPの2018年3月期の営業利益136億円のうち、「負ののれん」は83億円です。なんと営業利益のうち約6割が「負ののれん」が占めるのです。念のためですが、83億円というのは会計上のお話であってキャッシュフローには影響はありません。実際のところ、2018年3月期のRIZAPの営業キャッシュフローはわずか88百万円しかありません。それなのに配当を15億円支払っているのですから、めちゃくちゃです。

松本晃氏じゃなくても、このまま拡大路線を続けていくことは出来ないと瀬戸社長に進言するでしょう。従来、経営不振の会社を安く買うことで、「負ののれん」が発生し、見かけの営業利益を計上し続けてきたものの、今後は新規M&Aの原則凍結ですからそれも出来なくなります。

見かけ上の営業利益はともかく、2019年3月第2四半期決算の営業キャッシュフローは▲76億円です。今期は公募増資などで355億円の資金調達することが出来ましたが予断は許しません。2019年3月第2四半期決算時点で572億円の現金及び同等物がありますが、この資金をどう配分していくか、まさにプロ経営者と言われる松本晃氏の真価が問われるということです。これからも注目していきたいと思います。

※関連ブログ「国際会計基準「のれん」処理見直しの影響

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