内閣府が2017年6月に発表した日本国の成長戦略「未来投資戦略2017」。その中でも私が注目したのは、『「形式」ではなく、「実質」へのコーポレートガバナンス・産業の新陳代謝』という項目です。
ここで企業の稼ぐ力を高めるべく、次のような目標が設定されたのです。
「大企業(TOPIX500)の ROA について、2025 年までに欧米企業に遜色のない水準を目指す。」
2014年に公表された「伊藤リポート」以来、日本企業はROEの向上に努めてきたのですから、突然のROA重視という政府の目標変更に戸惑っている投資家や企業も多いかも知れません。
しかし、これは単に歴史が繰り返されているだけです。2000年代の始めには、株主重視の流れの中でROE導入が企業の間で流行しました。
その後、数年たって株主重視経営の行き過ぎに対する反省から指標はROAに代わり、さらに資本コストの考えが浸透してくるにつれてROICを導入する企業が増えたのです。ただ、ROICの場合は、投下資本の概念が難しいことから、企業内部に浸透せず形骸化していったという経緯があります。
いずれにしても、「伊藤レポート」と同様に、「未来投資戦略2017」の中でも、日本企業の収益性(利益率)の低さが指摘されていました。「未来投資戦略2017」資料7の中になかなか面白いデータがありました。各国企業の事業セグメント別の収益率の割合です。
(出典:未来投資戦略2017資料7)
これを見ると、日系企業では、営業利益率一桁の事業セグメントが全事業の90%を占めていることがわかります。米系企業との差は歴然としています。ただ、ここでも見落とされているのは、リスクという視点です。重要なことはリターンの絶対値ではなく、リスクに見合ったリターンかどうか、という視点です。
「日本企業のローリターンの原因は、ローリスクにある」かも知れないという視点は大切です。日本企業のリターンのみを高めればいいというのは的外れな議論であることは忘れてはいけません。
参考ブログ「日本企業はローリスク!?」