「戦略とはソート(並べ替え)である」これは私が戦略MQ会計を学んだ西順一郎先生の言葉です。戦略とは優先順位をつけることだと言えるでしょう。経営戦略の古典として名高い「新訂 競争の戦略」でマイケル・E・ポーターは「戦略とは捨てること」と言っています。それを体現するのがワークマンです。
ワークマンの2023年3月期の業績は、売上高1,252億円と前期比+7.7%の増収ながらも、営業利益は218億円と前期比△18.8%の減益、さらに営業利益率は17.4%と大きく落ち込む見込みです。円安による仕入価格の高騰の一方で、商品の価格を2023年8月期まで据え置く方針を打ち出しており、それが収益率に低下の要因といえます。
出所:オントラック作成
それでも、客層拡大を狙って、新業態であるワークマンプラスを成功させ、さらに女性や若者を中心に人気を集めてきたのは確かです。そのことは、売上高が堅調に推移していることが物語っています。それを支えるのが「しない経営」と「エクセル経営」です。ワークマンの「しない経営」は徹底されています。
「しない経営」は次の3点に集約されます。1.社員のストレスになることはしない、2.ワークマンらしくないことはしない、3.価値を生まない無駄なことはしない。ワークマンでは、仕事の期限を決めたり、ノルマや短期目標を設定はしません。そして、同社では「頑張らない」「頑張ってできても意味がない」と考えているのです。そのために、絶対に勝てるポジション取りをし、誰がやっても売上が伸びる仕組みをつくることが大切と同社の土屋専務はいいます。
2番目の「ワークマンらしくないことはしない」とは、高い粗利製品の販売、値引販売、顧客管理、毎年の新製品開発などアパレル業の戦略はマネしないということです。さらに「価値を生まない無駄なことはしない」ことを徹底しています。社内行事もしません。経営幹部は現場に行って極力出社しない。そして、極めつけは、幹部が思いつきでアイデアを口にしない、というのには、思わず苦笑してしまいます。
他社と同じことは「しない経営」は、勇気と覚悟が必要です。しないことを決める。これはまさに経営者の決断といえます。「決断」という字は、断つことを決すると書くのです。そして、この「しない経営」を支えるのが「エクセル経営」です。土屋氏が目指したのが、全員参加型のデータ活用経営です。言いかえれば、勘と経験による意思決定を、データに基づく意思決定に変え、誰でも参加できる経営ににすることです。こうすれば、社歴に関係なく、データを活用して平等に議論ができます。社員にとっては、「上司に忖度しない経営」になるわけです。
ワークマンのデータ経営の真髄は、エクセルの活用にあるのです。ワークマンが目指すのは普通の経営者を普通の社員で支えながら、市場で圧倒的に勝ち続けることです。そのためには、普通の社員がエクセルでデータを分析し、発見し、改革を考えることが大事だと土屋氏は語ります。ついに、ワークマン式のエクセル活用の秘密がわかる書籍が発売されました。ワークマン式「しない経営」と同様、お薦めです。
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