◆ 先週末の財務モデリング応用講座を終えて
先週末、財務モデリング応用講座を開催しました。ご参加いただいた皆さん、本当にお疲れ様でした。熱心なご質問もたくさん飛び交い、私自身も非常に刺激を受ける時間となりました。
さて、今日のブログでは、その応用講座の中でも取り上げたエクセルの「関数」についてお話ししようと思います。
◆ プロが使う関数はたった12個?
財務モデルを作るにあたって、皆さんはどれくらいの数の関数を知っていなければならないと思いますか?
実は、イギリスの財務モデリングコンサルティング会社であるPPS Financialが非常に興味深い調査結果を発表しています。彼らは2019年から2025年にかけて、100以上の高品質な財務モデルを分析しました。
対象となったのは、プロジェクトファイナンス、LBO(レバレッジド・バイアウト)、買収(M&A)など実務に直結するもので、すべて同社の厳しい品質基準に沿って構築・監査されたモデルです。
その分析結果によると、なんと全数式の97%が、たった「12種類」の関数で作られていたというのだから驚きます。
◆ 財務モデルにおける関数の使用頻度ランキング
そのランキングは以下の通りです。表には10項目が並んでいますが、「ANDとOR」「MAXとMIN」がそれぞれセットになっているため、合計で12種類の関数になります。
いかがでしょうか。見慣れた関数ばかりではないでしょうか。残りの3%は特殊な専門関数であり、便利ではあるものの、必須ではないと彼らは結論づけています。
◆ なぜOFFSETやINDIRECTは入っていないのか?
ここで、今回の応用講座でも少し特殊な立ち位置で紹介した「OFFSET関数」と「INDIRECT関数」について触れておきましょう。
ランキングを見てお気づきの通り、プロが使う97%の中にこれらの関数は入っていません。なぜなら、これらは「ボラタイル関数(揮発性関数)」というグループに属し、エクセル上のどこかのセルが変更されるたびに必ず再計算をしてしまうからです。
実務の財務モデルは何千、何万というセルが連動しています。そこにボラタイル関数が多用されていると、エクセル全体が重くなり、最悪の場合はフリーズしてしまいます。また、参照先が動的に変わるため、監査の観点からもトレースが難しくブラックボックスになりやすいのです。
だからこそ、自分がゼロから透明性の高いモデルを構築するときは、基本的には使うべきではありません。
◆ なぜ講座で推奨されない関数を教えるのか?
「あまり使わない方がいい関数なら、なぜわざわざ講座で教えるのか」と思われるかもしれません。
たしかに、自分が積極的に使うための「剣」としては必要ありません。ただ、現実のビジネス現場では、他人が作った複雑なモデルを引き継いだり、レビューしたりする場面が必ず発生します。実務の世界には、現在でもこれらの関数をあえて、あるいは知らずに使っているビジネスパーソンが一定数存在しているのが実情です。
そうしたモデルに出くわしたとき、関数の仕組みやリスクを知らなければ、適切にコントロールすることができません。他人の作った属人的なモデルから身を守るための「盾」として、実情を踏まえた上で知っておく必要があるのです。
◆ 最後に
関数はあくまで道具です。財務モデリングのプロになるために、何百種類もの関数を暗記する必要はありません。厳選された12の関数を深く理解し、正しく使いこなすこと。そして、遭遇する可能性のある厄介な関数のリスクをコントロールできること。これが何よりも重要です。
次回の「2026年9月26日(土)財務モデリング応用講座」でも、こうした実務のリアルを踏まえた実践的なお話ができればと思います。皆さんのご参加をお待ちしています。




