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米テック企業のAI投資:本当の規模はリースの注記にある

前編では、米テック大手の設備投資が営業キャッシュフローを超えたことを見ました。ただし、あれは実績です。キャッシュフロー計算書に出てくるのは、その期に実際に払った金額でしかありません。これからいくら使うつもりなのかは、そこには書いてありません。

では、これからいくら使うことが決まっているのでしょうか。5社が契約を結んだうえでまだ開始していないリースの金額を、直近の10-Kと10-Qから拾ってみました。あわせて、貸借対照表に計上されているリース負債も並べています。ここでいうリースは、設備のリースだけではありません。データセンターの建物を丸ごと借りる契約が中心で、会計上はオフィスの家賃と同じ扱いになります。

5社を合計すると、計上済みが約2,850億ドル、まだ開始していない分が約1兆900億ドルでした。マイクロソフトは計上済み885億ドルに対して3,291億ドル、メタは287億ドルに対して2,790億ドルです。注意すべき点は、計上済みが割引後の現在価値であるのに対して、未開始分は各社が記載した将来の支払額です。そのまま比較できる数字ではありません。それでも、注記の側が計上済みを大きく上回っていることは変わりません。

増え方も速いのです。マイクロソフトの未開始分は、1年前の同じ日には927億ドルでした。1年で3.5倍になっています。メタは2025年12月末が1,038億ドル、2026年6月末が2,790億ドルですから、半年で2.7倍です。さらに2026年7月に約680億ドルの契約を追加したと、同じ注記に書いてあります。前編で見た設備投資の水準は、これからさらに上がる方向にあるということです。

なぜ、これだけの金額が貸借対照表に載らないのでしょうか。基準が緩いからではありません。使用権資産とリース負債を計上するのは「リース開始日」であり、IFRS第16号もASC842も、これを「貸手が、借手による原資産の使用を可能にする日」と定義しています。署名した時点では、まだ計上しないのです。

データセンターの場合、契約から実際に使えるようになるまでに数年かかります。マイクロソフトの注記には、3,291億ドルが2027年6月期から2033年6月期のあいだに開始し、リース期間は1年から20年だと書かれています。ただし、一部の取り決めは契約条件の充足が前提だとも書かれています。署名は済んでいるが引き渡しはこれから、という段階の金額なのです。

各社が任意でこの数字を書いているわけでもありません。米国基準では、まだ開始していないが借手に重要な権利義務を生じさせているリースについて、情報を開示するよう求めています。ただし求めているのは情報であって、金額の示し方までは定めていません。だから表で出す会社もあれば、一文で書く会社もあります。

ここで、前編で見た設備投資にこの未開始分を足せばよい、とはなりません。同じデータセンターでも、自社で建てれば投資キャッシュフローの「有形固定資産の取得による支出」に出てきますが、リースで借りればそこには出てきません。リース開始日に使用権資産とリース負債が両建てで計上されるだけで、そこでは現金が動かないからです。支払いはそのあと、オペレーティング・リースならリース料として営業キャッシュフローから、ファイナンス・リースなら元本が財務キャッシュフロー、利息が営業キャッシュフローから出ていきます。前編で見た設備投資の金額には、リースで調達した分が入っていないのです。

日本でも、2027年4月1日以後に開始する事業年度から、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」が適用されます。借手は、短期リースや少額リースといった例外を除き、原則としてリースを使用権資産とリース負債として計上することになります。リース負債の測定に反映されていない将来のキャッシュ・アウトフローの例として、「契約しているがまだ開始していないリース」を挙げています(適用指針第95項)。開始前のコミットメントが貸借対照表の外に残る構造は、日本でも同じです。

2019年12月に、IFRS第16号によってリースがオンバランスになったという日経新聞の記事を、このブログで取り上げたことがあります。そのとき私は、これはあくまでも会計上の話であって企業の実態には影響がない、と書いて締めました。会計上の話として片づけたので、注記まで読む必要を感じていませんでした。いま、AI投資がこれからどこまで大きくなるのかが、いちばんはっきり書いてあるのがその注記なのです。

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