2024年11月に、米テック企業のAI投資について書きました。アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、メタの4社について、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー(FCF)の推移をチャートにして、そこにこう書きました。「アマゾンを除けば、FCFがプラスですから、あくまでも営業キャッシュフローの範囲内で投資活動を行っていることがわかります」。
これは、投資は営業キャッシュフローの範囲内であるべきだということではありません。巨額に見える投資も、その期に稼いだキャッシュの中に収まっていました。だからその時点では、資金の出どころを気にする必要がありませんでした。
2026年4〜6月期の決算が出そろったので、同じ4社を同じ物差しで並べ直してみました。各社の営業キャッシュフローと設備投資を、1年前の同じ四半期と並べたものです。
アルファベットは、営業キャッシュフロー390億ドルに対して設備投資が449億ドルでした。1年前は営業キャッシュフローが277億ドル、設備投資が224億ドルでしたから、営業キャッシュフローが41%増えるあいだに、設備投資はちょうど2倍になった計算になります。
アマゾンも同じ形です。営業キャッシュフロー454億ドルに対して設備投資は542億ドルでした。1年前は両者がほぼ同額でしたから、この1年で差がついたことになります。
メタは営業キャッシュフロー319億ドルに対して設備投資が301億ドルで、ほぼ並びました。4社の中で差が残っているのはマイクロソフトだけです。営業キャッシュフロー554億ドルに対して、設備投資は358億ドルでした。
設備投資を営業キャッシュフローで割ると、この1年の動きがはっきりします。アマゾンは99%から119%へ、アルファベットは81%から115%へ、メタは65%から95%へ、マイクロソフトは40%から65%へ上がりました。4社とも上がっていて、そのうち2社が100%を超えています。
なぜこうなるのでしょうか。Epoch AIの集計によれば、2023年からの3年間で、これら4社にオラクルを加えた5社の営業キャッシュフローは年率23%、設備投資は年率70%で伸びています。伸び率が3倍違えば、水準の差はいずれ埋まります。この1年でみても、マイクロソフトは営業キャッシュフローが30%増えるあいだに設備投資を110%増やしました。まだ差が残っているだけで、向かっている方向は他の3社と同じです。
営業キャッシュフローで足りない分は、外部から調達するしかありません。オラクルの2026年5月期は、営業キャッシュフロー320億ドルに対して設備投資が557億ドル、FCFは237億ドルのマイナスでした。この差は借入か増資で埋めることになります。
営業キャッシュフローから設備投資を引いた額、つまりフリーキャッシュフローで並べてみます。
1年前は4社ともプラスでした。2026年4〜6月期は、アマゾンが88億ドル、アルファベットが59億ドルのマイナスです。アルファベットのFCFがマイナスになったのは、2004年の上場以来はじめてだと報じられています。
ここで、FCFがマイナスであること自体を悪いわけではありません。回収に時間のかかる投資をするとき、その期の営業キャッシュフローに収まらないのは、むしろ普通のことです。工場を建てるときに、その期に稼いだキャッシュだけで払える会社は多くありません。論点になるのは、回収が始まるまでのあいだ、資金の出し手が待ってくれるかどうかです。
そう考えると、確認する数字は3つです。営業キャッシュフロー、有形固定資産の取得による支出、そしてその差額を何で埋めたかを示す財務キャッシュフローです。この3つの関係は、規模の大小に関係なく、自社の設備投資計画にもそのまま当てはまります。
ただし、ここまで見てきた設備投資の金額が、投資の全部だとは限りません。キャッシュフロー計算書に出てくるのは、実際に支払った分だけです。まだ支払っていないけれど支払うことが決まっている分は、別の場所に書いてあります。後編ではそちらを見ていきたいと思います。





