今回は私が最近注目している動画「海外Yパパラジオ 世界を読み解く」の「【講義】君はまだ、ドルコスト平均法は気休め以外の意味がないことを知らない」について書いてみたいと思います。
私自身、ドルコスト平均法について長い間思考停止に陥っていました。
「銘柄を分散すればリスクが下がる。だから時間も分散すれば、さらにリスクが下がる。」
そんなふうに、ほとんど疑うことなく受け入れていたのです。
しかし、この動画を見て、「時間分散」という言葉自体が少し誤解を招く表現なのだと気づきました。私は無意識のうちに、「時間そのものにリスクを減らす力がある」と考えていたのです。
ここで前提を整理しておきたいと思います。ドルコスト平均法という言葉は、一般的に二つの別のものを指すようです。一つは、毎月の給与から積み立てていく方法です。つみたてNISAでコツコツやっているのがこれにあたります。この場合、投資に回さずに寝かせている現金が手元にあるわけではありません。もう一つは、すでに手元にあるまとまった資金を、あえて何回かに分けて投資していく方法です。以下で取り上げるのは、後者になります。
例えば、1000万円を最終的にすべてS&P500に投資するとします。一括投資なら、今日1000万円すべてを投資します。翌日に株価が20%下落すれば、資産は800万円になり、200万円の損失です。一方、10回に分けて投資する場合、最初の日に投資しているのは100万円だけです。残り900万円は現金のままです。翌日に20%下落しても、損失は100万円の20%、つまり20万円しかありません。
ここで私を含めて多くの人は「時間を分散したからリスクが下がった」と考えてしまいます。しかし、本当にそうでしょうか。極端な例を考えてみます。1000万円あるのに、今日は1万円だけ投資し、999万円は現金のままにしておきます。その翌日に株価が暴落したとしても、ほとんど損はしません。これは時間分散のおかげでしょうか。もちろん違います。単に、株式に投資していた金額が小さかっただけです。
ドルコスト平均法でも、本質的に起きていることは同じです。投資期間中の資産配分は、
現金100% → 現金90%・株10% → 現金80%・株20% → … → 現金0%・株100%
と徐々に変化していきます。
つまり、「時間がリスクを減らしている」のではありません。市場の値動きにさらされている金額、つまり、株式へのリスクエクスポージャーが少しずつ増えているだけなのです。だから、投資開始直後に暴落すれば損失は小さくなります。しかし、その裏返しとして、投資開始直後に株価が上昇した場合には、まだ現金だった部分はその恩恵を受けられません。
つまり、ドルコスト平均法はリスクだけを減らす魔法ではありません。一括投資に比べて株式へのエクスポージャーが小さい期間があるというだけであり、その分、リスクと期待リターンの両方が小さくなっているのです。では、冒頭の「銘柄を分散すればリスクが下がる」はどうなのでしょうか。こちらは間違いなく正しいのです。しかも、リスクだけが下がります。
銘柄分散で消えるのは個々の企業に固有のリスクです。この固有リスクに対して、市場はリターンを支払ってくれません。言い換えれば、市場は分散すれば消せる企業の固有リスクには報酬を払ってくれないのです。対価が払われていないものを消しても、失うものはありません。ですから、期待リターンはそのままで、リスクだけが下がります。投資における唯一のフリーランチと言われるのは、このためです。
一方、時間分散で動かしているのは、市場リスクをどれだけ引き受けるかという量です。市場リスクには、リスクプレミアムという対価が払われています。ですから、量を減らせば、期待リターンも一緒に減ります。同じ「分散」という言葉を使っていても、銘柄分散が対価の払われていないリスクを消しているのに対して、時間分散は対価の払われているリスクの量を減らしていることになります。リスクだけを下げられるのは、対価が払われていないリスクを消すときに限られます。それ以外の場面では、リスクを下げれば期待リターンも下がります。
企業の話にも、同じことが言えます。例えば、企業が「この事業はリスクが高いから撤退する」と判断したとします。ここで、そのリスクが分散によって消せる種類のもの(企業固有のリスク)であれば、株主はすでに自分のポートフォリオでそれを消しています。企業がわざわざその事業から撤退しても、株主から見て新しく生まれる価値はありません。多角化によるリスク分散が株式市場で評価されにくいのは、このためです。
一方、そのリスクが市場リスクであれば、そこにはリスクプレミアムという対価が払われています。撤退すれば、その対価まで一緒に手放すことになります。どちらの場合も、「リスクが高いから」は、それ自体では撤退の理由にはなりません。判断すべきは、その事業がNPVを生んでいるかどうかです。
私はこれまで、「時間分散」という言葉を何の疑いもなく使ってきました。しかし、この動画を見て初めて、その正体は「時間」ではなく「資産配分」だったのだと理解しました。動画ではこの後、期待値では一括投資が有利であること、それでも分割には心理面での意味があることが語られています。ぜひ、ご自身でもご覧になってみてください。



