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エーザイの凄さ

2020年7月17日付日経新聞でエーザイの強い非財務資本が取り上げられています。非財務資本とは、PBR(株価純資産倍率)の1倍を超える部分である「見えない資産(資本)」のことです。PBRは前回のブログ「呆れた知財価値の推定方法」で取り上げたばかりです。非財務資本は、知的資本、人的資本、製造資本、社会・関係資本、自然資本に分けられます(下図ご参照)。


出典:日経新聞「エーザイ、強い非財務資本」

このうち、エーザイの持つ新薬候補などの知的財産は知的資本に該当します。新薬候補は将来のエーザイのFCF(フリーキャッシュフロー)の増加に寄与する可能性があります。つまり、将来の企業価値向上につながります。もちろん、企業価値向上に寄与するのは、知的資本だけではありません。人的資本の重要性は言うに及ばないでしょう。エーザイの柳良平CFOはこう強調しています。「非財務資本は将来の株価形成の重要な要素だ

さらに柳良平CFOは「企業価値最大化につながる資産を積み増すための資金創出を優先するBS脳の考え方」に言及しています。目先の損益ばかり重視するPL頭の経営者が多い中で、柳良平CFOはBS頭の経営者であることがわかります。

まさに筋肉質なBSをつくるべく本業とシナジーが薄い事業を売却。売掛金の回収日数の短縮、在庫削減などのワーキングキャピタル(運転資本)の改善によるFCFの改善。こうした活動によって、本業の利益以外に10年間で1,500億円超の現金を創出したのです。そして、創出した資金を未来投資に向けます。エーザイの研究開発費は、1,655億円と過去10年で最高水準だといいます。まさに未来の企業価値最大化のための布石を打っていることがわかります。

こうした取り組みが、エーザイの足元のPBR3.52倍という日経平均(1.09倍)を大きく上回る数字に出ているのです。企業価値の最大化のためには、FCF(フリーキャッシュフロー)を増やし、資本コストを下げる必要があります。ファイナンスの教科書通りのことを当たり前のようにやり続けているエーザイの凄さ、さらにそれを株式市場が評価しているのを目の当たりにするとファイナンス教育に従事している身としては嬉しくなります。

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