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「稲盛和夫の実学」を再読する

日本を代表するカリスマ経営者と言われた稲盛和夫氏が2022年8月に亡くなりました。京セラをゼロから立ち上げ、KDDIを超優良企業に育てあげ、日本航空(JAL)を破綻から救った経営手腕は、誰もが認めるものでしょう。ずい分昔に読んだ「稲盛和夫の実学」をふと読みたくなりました。この本は1998年10月に初版が出版され、いまでも売れ続けている本です。

第一章は、「キャッシュベースで経営する【キャッシュベース経営の原則】」です。この章の冒頭で、稲盛氏は、キャッシュに着目して、正しい経営判断を行うべきと断言しています。私がかつて蛍光ペンを引いたところは、例えば、こんな箇所です。「さまざまな会計上のプロセスを通じて計算されたペーパー上の「利益」を待つのではなく、まぎれもなく存在する「キャッシュ」にもとづいて経営の舵取りを行うべきなのである。ただし、現実問題として、決算上の「利益」というものも、企業活動の成果としてはきわめて重要なものであり、株主への配当金も商法上の「処分可能利益」から行うことになっているので、その意味では当然、これから目を離すわけにはいかない」

第二章「一対一対応を貫く【一対一対応の原則】」、第三章「筋肉質の経営に徹する【筋肉質経営の原則】」、第四章「完璧主義の原則【完璧主義の原則】」、第五章「ダブルチェックによって会社と人を守る【ダブルチェックの原則】」と続き、この本のメインは、やはり、第六章「採算の向上を支える【採算向上の原則】」でしょう。この章では稲盛経営の代名詞とも言えるアメーバ経営について解説しています。アメーバ経営とは、企業を6~7人の小集団(アメーバ)に分け、アメーバごとに時間当たり採算の最大化を図るというものです。そこには、稲盛和夫氏の「売上最大、経費最小」で経営をシンプルにとらえるという基本理念があります。

この章で私が線をひいているのは、こんな箇所です。「社会の経済的発展をもたらすのは、人間が仕事などを通して創造する新しい経済的価値である。この発展の源となる「価値」をより多く生み出すには、できるだけ少ない経費でできるだけ大きな経済的価値を創出する必要がある。企業経営にとって、このことは最小の費用で最大の売上を得ることを意味する。(中略)ところで、売上を増やそうとするとすると通常それに比例して経費も増えてしまいがちだが、私はそうではなく、売上はあらゆる智惠と工夫を使って増やす一方、経費はつねに徹底して切り詰めるようにすることが経営の原則であると考えてきた」これは私がよくいうPL頭(売上をあげて、コストを下げるしか考えないこと)ではありません。なぜなら、京セラは、経営資源の中でもヒトに次いで重要な「時間」当たりの付加価値を「時間当たり採算」と称して、管理指標にしているからです。

最後の第七章は「透明な経営を行う【ガラス張り経営の原則】」です。稲盛氏は「会社経営はトップの経営哲学により決まり、すべての経営判断は「人間として正しいか」という原理原則にもとづいて行うべきものと確信している」と言っています。本書は、経営のための会計学の原理原則を論じることを通して、稲盛氏が考える会社経営のあり方、経営の基本的な考え方を伝えようとしています。これからも折に触れて戻ってきたいと思える素晴らしい本です。

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