2022年3月3日付日経新聞によれば、国際会計基準(IFRS:イファースやアイファースと発音)をつくる国際会計基準審議会(IASB)で、企業に「営業利益」の開示を義務化する方向で議論が進んでいます。
日本のIFRS適用企業約250社のうち1割は「営業利益」を開示していません。開示している企業のなかでも、営業利益に持ち分法投資損益を含めている企業が2割、含めていない企業が5割と企業によって営業利益の定義が異なります。
日本では、IFRSを国際会計基準と訳しますが、IFRSは、International Financial Reporting Standards の略語です。直訳すれば、国際財務報告基準なのです。IFRSの目的とは、「単一のスケールで世界中の企業を比較すること」です。言い換えれば、財務報告の目的を「投資家への情報提供機能」として限定的にとらえているところに特徴があります。さらに、IFRSの原型的イメージには、損益という概念がありません。それでは、どのように投資家は企業の良し悪しを判断すればいいのでしょうか。
簡単に言えば、資産と負債の時価(将来、生み出すキャッシュフローの現在価値の合計)の差額として、企業の価値をとらえるです。言いかえれば、IFRSは、損益計算書(PL)よりも貸借対照表(BS)を重視すると言えます。
そうしたこともあってか、IFRSでは、売上高(あるいは収益)や最終損益などの開示は求められるものの、営業利益などの段階利益の開示や定義は、企業が判断することになっています。これは、IFRSの思想には、会計処理のすべてを規則できっちり決める「規則主義」とは相反する「原則主義的」な考え方が採用されていることもあるでしょう。
この原則主義的な裁量をメリットと考える企業も多く、営業利益開示の流れに対して「多様な企業活動に合わせた業績表示が難しくなり、企業と投資家との対話を後退させる」(経団連)とする意見もあるようです。ただ、私のように財務分析する立場からすれば、企業を比較分析する際に余計な損益調整をしなくて済むのでありがたいと思います。